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| 「演奏していて、自分の演奏があまりに素晴らしすぎて自分で泣いちゃうことは、1年に何回くらいありますか?」 「自分の演奏中に泣くことはないなぁ・・ いい音が出たことに対する感動はあるけど・・「いいじゃんこのピアノ」とか、鍵盤のこことここを押さえたら、すごいいい音程になったとかそんな感じだな。演奏中に、忘れていた情景をぱっと思い出すことはある。誰かの顔とか、木の節穴とか、カブトムシの置かれている向きとか・・・一瞬脳裏によぎって、ぱっとまた戻る。 演奏中に色が見えるだの、かぐわしい香りがするだのと言う奴もいるけれど、俺にはそういうのないな。あえて言えば白黒の世界かなぁ。夕焼けを見て、ある日の演奏や曲を思い出す、なんていう逆のパターンはあるけどね。 人の演奏で泣いたこともないな。音に対して感動、やられちゃう、ってことはあるけれど。感動することって、意識してできるもんじゃないけど、すごい大切なことだよね。俺は、ある時まで、ビル・エヴァンスの良さがあんまり分からなかったのね。仕事として要求されるから、聴くし、弾くし、だけど気持ちが入らない。何をどういうふうに弾いて、ベースをこうやったらいいかも分かるけど、何がそこまで良いのか分からない。そんな状態だった。 多分中学2年でオスカー・ピーターソンに出会ったショックが大きすぎたから、ビル・エヴァンスとかモンクの良さにすぐに気付けなかったんだと思うんだけど。でも、ある時、国分寺のジャズ喫茶に入った瞬間、ビル・エヴァンスの「ワルツフォーデビー」の1曲目の出だしが流れてきて、背筋がさっと凍る程感動しちゃってね。 感動できたら理屈も分かるようになるんだよ。あーこういうことだったのか・・・と。この体験の後は、以前と同じようにエヴァンスの曲を弾いても、ちゃんと分かって弾けるようになった。 ビル・エヴァンスの何がほかと違うか・・・ ハーモニーの選び方、かな。リズムの取り方も。例えば、オスカー・ピーターソンは、ブギウギに根ざしたリズムで、古いスタイル。エヴァンスは、平たい4ビート。ドミソがファラドになってソシレになってドミソに戻る。音楽というのはこのように起承転結があるものだけれど、エヴァンスの場合は、なんだか分かんない状態で物語が始まって、何となく山場に連れていかれて、あー終わったーみたいな、彼オリジナルの魅力がある。 さて、本題に戻るけど・・・いや、本題に戻ってはいないかもしれないけど(笑)、ピアノを弾く、っていうのは、自分が死ぬまでにどう生きるか、それを日々切り取っていること、なんだよなぁ」
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