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Nevermind / Nirvana
1991.9.24 MVCG-67 ¥ 2,548 (税込) CD
Smells Like Teen Spirit / In Bloom / Come As You Are / Breed / Lithium / Polly / Territorial Pissings / Drain You / Lounge Act / Stay Away / On A Plain / Something In The Way / Endless Nameless 


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ロックっていう音楽は、時々 「ツマンナイ言葉とか、考えを吹っ飛ばすダイナマイト」 に火をつける着火用具の働きをすることがある。中盤の盛り上がり部分、サビ、間奏のギターソロ……楽曲、レコードによってその働きをする部分は様々だが、この名盤は開始たった10秒にその部分がある。カート・コバーンのひっかくようなギターに、デイヴ・グロールのタム・ロールがぶつかる刹那、人間の中の爆弾が爆発する……

90年代初頭に訪れた、グランジ・ブーム。その核にいたロックバンド・ニルヴァーナの2NDアルバムにして世界的名盤がこの 「ネヴァーマインド」 。その一曲目 「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」 は僕だけじゃなく世界中の人のダイナマイトに火をつけた。ロック史に残る名盤である。

……なのだがなぜこのアルバムが名盤なのかと思ってしまうときがある。死にそうな歌声で、ひたすら

「ハロー、ハロー、どれくらい酷い?」

と垂れ流すようないってしまえば 「ネガティブ・ロック」 が、なぜ求められるのかと。けれど、僕も歳を食ってきてわかった気がする。ニルヴァーナ、いや、カートが叫んでいたことは全部真実で、ひどくリアルなものだったからだ。思いっきり明るい顔して、真に嘘偽りなく、

「あはははは!この世の中ってあんまりに楽しいことばっかりで、幸せすぎるよ!」

なんていえる人はきっとこの世界には一人もいない。本当は怒りたい、泣きたい、逃げ出したい、なのに笑顔の仮面をつけて生活しなきゃ上手に道も歩けないこの世の中をニルヴァーナは叫んだ。一人なのに誰もそばにいない、出ようとする杭は叩き潰されるこの世の中をカートが吼えた。怒、寂、哀、哀、哀。それが、人類全員の心にあった 「他の何か」 にも火を付けた。それがリアルだった。嘘・偽りが無く、ただただリアルだったんだ。そして僕らがひどくロックって呼ぶものと同じ形をしていたから、皆が求めたのだ。
ダイナマイトに火を付ける裏で、冷め切った声で水をかけている、この正直すぎるロックの、楽曲の持つ爆発性と熱気。歌詞と雰囲気が放つ虚無感と冷気。この二つの大波が反作用を起こし渦を作る。この渦が生み出す強烈な妖気・磁力が、この迷盤を名盤にしているのだ。

カート・コバーンはきっと世界で一番純粋な青年だった。死ぬほど純粋な人しか触れないカーテンを、彼は開けた。結果的にこのアルバムのせいで死んだなんて言われてもいるが、実は純粋すぎたゆえにこの世の中のことが見えすぎたのが一番の原因なんじゃないかと思う。だってこの世はくだらないから。汚すぎるから。むかつくから。吐き気がするから。

時には目を背けることも、生きていくには必要ということなのかもしれない。ただ痛みを抱えて生きていくことと自ら望んで死ぬこと、どっちが幸せかなんて僕にはわからないけれど。


このレコメンド文はどうでしたか?
2005/1/16 うるお
☆

 ボックスセット、出たね。本当に。また急に何が起きて回収!とかなるかもしれないから、早めに買っておいた方がいいよ。オレは買わないけど。たぶん。トシをとるごとにロックから離れ、うるさい音がどんどん苦手になってきちゃってね。でも、ひさびさに聴きなおしてみました、『Nevermind』。これをリアルタイムで聴いた世代の記憶を書いておく。

 当時、日本でもUSのカレッジチャートの存在がもてはやされるようになり、UKからもハッピーマンデイズのようなおマンチェ系インディダンスバンドに続いて、RIDEなどのバンドが新しい波を起こしながらやってきた。そんな頃の話。ニルヴァーナが大ブレイクしたのは。いやーもうびっくりしたのなんの。

 当時、個人的にはソニック・ユースがお気に入りで、アルビニ周辺とか、ジム・フィータスとかも大好きだった。そんな中、注目されていたレーベルがSUB POPだった。シアトルで何かが起こっている。始めてニルヴァーナを知ったのは何かの雑誌だった。UK60'sのニルヴァーナは知らなかったが、日本にもニルヴァーナというバンドがいることは知っていた。同じバンド名なんだね、というのが第一印象。その雑誌に掲載されていた白黒のライヴフォトは、カートがギターを弾きながら上下逆さまになってドラムスに突っ込んでいく、今では有名なあの1枚だった。これが今シアトルで起きていることなのか!? よくわからないけどビビッとくるものがあった。それを見て、すぐに既に発売されていたアルバム『BREACH』を買いに行った。当然、日本盤なんか出ていない。新宿アルタの中にあった行きつけの輸入盤店CISCOに行った(当時はヴァージンメガストアができたかできないかくらいの頃。タワーも渋谷だけだった)。当時、この手の音を探すならCISCOか新宿レコードと相場は決まっていたのだ。しかし、『BREACH』はなかった。品切れだって。インディレーベルからの発売だから、次の入荷予定はハッキリわからない。当時はそんなもんだったのだ。

 しばらくして、入荷してきたのは『Nevermind』だった。今では見る事のない、紙のロングボックスに入った『Nevermind』は、ごく普通に新入荷のコーナーに置かれていた。ロングボックス入りということはメジャーからのリリース。すでに、先にメジャー行きを果たしていたソニック・ユース(これ自体も大事件だった)と同じゲフィンからのリリース。もちろんすぐに買った。聴いてみたら、1曲目の「Smells Like Teen Spirit」は思ったよりもポップな曲で、ほかにも親しみやすい曲が多くて大好きだったけど、これであの写真のような激しいライヴをやるのか?とも思った。『BREACH』はその少し後に買う事ができて、ああ、メジャーってのはこういうことなんだとも少し思ったが、ソニック・ユース同様、そんなにイヤな気分にはならなかった。

 リリース直後は、この手の音が好きな人は、サウンドよりも割礼された赤ん坊が泳ぐジャケットの方を話題にしていたような気がする(オレのまわりだけか?)。しかし、週を追うごとにアルバムはビルボードのチャートを駆け上がって行く。しかもインディチャートではなく、ナショナルチャートだ。ついには1位。本当に驚いた。アメリカではこんなサウンドを誰もが聴いているのか!? ラジオからこんな曲がガンガンながれているのか!? 本当に流れていた。聴きなおしてみても、なぜこれが大ヒットするのかぜんぜん分からない。持っているCDは輸入盤だから歌詞も付いていないし(付いてても読めないけど)、その彼らが属しているシーン自体はマイナーなものだがら、まだ情報は少ない。
 スゲー奴らが出てきたぜ!じゃなくて、なんでこれが売れるの!? こういう音楽を聴いていた人間ほどそう思ったはずだ。当時の感想はそんなもの。そしてカートたち本人たちがいちばん驚いたに違いない。
 そして、この後、次々と同じような傾向を持つバンドがメジャーデビューし始めた。サウンドガーデン、マッドハニー、パールジャム、それはいつのまにか「グランジ」とよばれるようになっていた。確かにシアトルでは何かが起きていた。それだけは確かだが、日本人にとってのリアルとなるまでには、もう少し時間が必要だった。正直に言っちゃうと、オレには4年前のブルーハーツの1stの方がよっぽど衝撃だったんだ。

 蛇足だが、アメリカ盤の初回盤は、ラストの隠しトラック(13曲目)が入っていなかった。たぶん2ndプレス以降になって追加されたんだろう。オレもあとで中古で盤面を確認して(メイントラックとボーナスの間にブランクを示す線というかスペースがあった)から買いなおした。そういえば、CDの隠しトラックとか盤面を注意深くみることを、オレはこのアルバムで知ったんだよなぁ。


このレコメンド文はどうでしたか?
2004/12/14 いけたな
☆

聴いたら燃える
Nevermindはロックを変えた20世紀で、1位、2位を争う優れたアルバムだ。いまさら、僕な
どがレビューをするまでもないほど様々な視点からの批評がされている。
 89年Bleachをもって、Grungeをもって、ロックに杭を突き刺したNirvanaはNevermindでメジ
ャーレコードレーベルと契約を果たした。メジャーからのリリースにかかわらず、Nevermindの
サウンドはまるでレコーディングを自宅の地下で終えたようなエコーと、ディストーションでなくファズサウンドにアナログコーラスのギターサウンドが特徴的なアルバムになっている。
 その生々しい、地下を静かに流れるような音はカートのもの悲しい声をのせ、カートの怒りや、悲しみや、恨み、厭世観、すべてを直接的に伝えている。
 虚栄で固められた人の仮面を引きはがすような力強さがあった、のだろう。嘘じゃない、きっ
と真実と呼べる数少ない言葉達が、きっと真実に限りなく近づいたシンプルな音に乗って人の心
を突き刺した。
 時代に合ったんじゃない。人にあった。人の心を映した。
 カートのぎりぎりのメッセージが心に届いた。カタルシスと呼ばれるようなぎりぎりが。


このレコメンド文はどうでしたか?
2004/4/4 ユウヤ
☆

ヘッドホンでききたい
 ニルヴァーナという言葉は、涅槃や解脱といった意味を持っているらしい。
つまり元々この言葉は本来の語源は(まともな)宗教用語であったと思われるが、
地下鉄サリン事件以来、どうもこういう部類の言葉はカルト的な、
もしくはカルトでなくても本来の語源よりは低俗な次元での使われ方が一般的になっているんじゃないかと思われる。

 

 そんなわけで、もうクリスマスですね。クリスマスには多くの男女がホテルでニルヴァーナしまくるんでしょうね。そんな人々を影でうらやましい〜と思いつつ一人でクリスマスケーキを食べなければならない皆様(と僕)、こんな時だからこそニルヴァーナです。

 つい数ヶ月前にベスト版が発売されたこのバンドの大傑作を是非、ベスト版で初めて彼らを知った方も、ベスト版で彼らを懐かしんだ方も、聖夜のカップルに怨みをこめつつボリュームを大にして聴きましょう。うん、暗すぎですな。


 

 ・・・と、冗談めかしてこの文章を終えるつもりでおりましたが、つのる不況に脅え、テロに脅え、核兵器に脅え、増税に脅え、ヤクザに脅え、少年の集団に脅え、空き巣強盗に脅え、さらには上司の怒りに脅え、近所のボス(犬)に脅え、農協牛乳の賞味期限に脅え、森羅万象あらゆるものに脅えてしまう近頃では、彼らの音楽がなんだか冗談では済まされないほど重くのしかかってくるような気がしてなりません。

 このバンドのメンバーであるカート・コヴァーンの自殺の話や、その後に残された人々の間に起こっている確執の話、そして肥大化した彼等の伝説とは全くなんら関係のない今の日本で、腹の底からずっしりと響くようなこの感じ。なんなんだ。



ニルヴァーナをこんな風に味わなければならないような時代がくるとは。

でも、それでも彼等の音楽を聴きたくなる時が自分にはあります。

それだけの作品、ということで。


このレコメンド文はどうでしたか?
2002/12/21 虚空猫
☆


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