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| レイ・ブライアントは、アーシーというかブルージーなプレイをするピアニストで、トリオで名を成した人だけれど、これはソロなんです。72年、モントルーのジャズフェスティバルで、オスターピーターソンがソロで出演する予定だったところ、何かの事情でヨーロッパに行けなくなった。レイ・ブライアントはその代役で出たんだけど、すごくウケた。それまでは、あまたあるシブいバンドのピアノニストの一人だったけれど、ちょっと大きな看板となった。そういう「チャンスをモノにした」的なエピソードも、背景としておもしろいと思う。そしてまたこのアルバムは、ジャケットがすごくかっこいい。ジャズのレコードジャケットによくある、白黒のコントラストがはっきりした写真で、彼が両手のひらをこちらに向けて広げている。本当に大きな手なんだ。 コンサートの終焉、アンコールで「Liebestraum Boogie」をやっているんだけど、冷静によく聴いてみると、アドリブがなくてテーマとサビを三回半繰り返すだけ。キーがAフラットでテーマが跳ねる。それがすごくよくって。彼が吉祥寺のライブハウスで演奏したときに聴きにいったんだけど、そこでやっぱり、「Liebestraum Boogie」をやった。彼の最大のヒットだからね。あの、ブギウギの左手のバウンスのタイミング、基本的にはどういうふうにバウンスするのか本人に聞いてみたんだ。そうしたら、「あれは8ビートだよ」と話してくれた。でも、どうしてもそうは聴こえない。それもまた、発見だよね。彼が8ビートだと思っている技法で弾いているのに、僕にはそうではないように聴こえる。 そういうふうに分析的に音楽を聴くようになったのは、プロになってからだけれど、そのずっと前、最初に聴いた当時は、スピードがあってすごい展開をしているものだと思っていた。ところが後になって自分で弾いてみると、「あれっ、別段、何もやっていない」ということに気づいたりする。さて、彼の手とは違うこの僕の手で、彼の演奏から受けた感動というものを、聴く人にいかに伝えられるのか。自分の思ったとおりに弾くのがいいのか、それとも、自分の受けた印象や感動を整理してかっちりとやるほうが伝わるのか。そこはずっと探っているような気がする。 「Liebestraum Boogie」というは、リストの「愛の夢 第三章」なんです。第1・第2主題だけを使って、Aメロとサビにして、ポッと素敵な32小節の曲にしてブギウギにしているわけだ。というのを知ったのは、つい2年前。昔、リストを練習しているときに身に入らなくて、ピアノを辞めようかなと思っているところでジャズが好きになったものだから何か感じるものがあったよね(笑)。それでも、30年間ずっとこの曲が好きでいるっていうのが、いいなと。
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