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| 僕が「マイ・フェヴァリット・シングス」を初めて聴いたのは、このニューポートのジャズフェスティバルのライブ盤(LP盤)だった。それは、ジャズ喫茶通いをしていた高校生の頃のこと。その日も階段を上ってドアに手をかけた、そこでタラッタラ、タラッタラと、イントロが始まった。思い出の中で美化しているのかもしれないけれど(笑)。そのまま立ちすくんで、レコードが終わったときにはいつものテーブルに座っているんだけど、何が起こったのかわからない。長かったのか短かったのかもわからないし、とにかくヤラれたんだよね。サックスからこうピアノにいって・・・・・・というようなことが、後から聴いてわかったけれど、その時はとにかく感動したことだけを覚えていて。『セルフレスネス』という作品をそこから知って、あとからジョン・コルトレーンの王道のものも聴いたんだけれど、それはわりと緩やかで、あまりおもしろくなかった。 僕がヤラれてしまったバージョンは、ドラムがロイ・ヘインズ。そのジャズフェスティバルで、エルヴィン・ジョーンズの都合が悪かったらしい。ロイ・ヘインズは、ジャズがビーバップになるころからプレイしている、すごい人。だけど、彼なんかからみたらずっと若手のチック・コリアが、やがて新しいことをやりだすときにドラムを叩いたのがロイ・ヘインズだった。キャリアがあってベテランで、伝統的なことができて、しかも新しい人ともできる。そして、わりとビーバップだった人なのに、ジョン・コルトレーンのところで叩けるというのも、これもまたすばらしいと思う。 僕のコルトレーン初体験はそんな具合なので、コルトレーンといったら、定番としてはドラムはエルヴィン・ジョーンズなんだろうけれど、ロイ・ヘインズが刷り込まれている。だから、エルヴィンのドラムが自分のものになるのが、ちょっと遅くなる、自分史的に。 このアルバムは、昔よくあった、別の録音をカップリングしているアルバムで、裏面の「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー」、ドラムはエルヴィン・ジョーンズ、そのバラードもよかった。エンディングのカデンツ、最後の見せ場。普通は二秒から五秒くらいなんだけど、何分間もやるの、一人になってからゴーッと吹いて、ワッと盛り上がって、最後にバシン。しびれた。 とにかく聴いたときの感動というものは、何が起こったのかわからなかったくらいに衝撃的だった。一度、何かに心がしびれるという経験、その一瞬の感動で、一人の人間は、一生かけて探すような課題に出会うことがあるんですね。そうすると、哲学とか思想などにいってしまうこともあるんだろうと思う。僕にとっては、インド哲学とかそういうものでもない、ましてやキリスト教でもないと思うけれど、彼がそこにみた何かに代わるものを自分の中につくらないと、自分で歩いてゆけないわけで。コルトレーンをたどるからこういう話しになるんだな(笑)。哲学的なジャズの代名詞のような人だからね。 このアルバムは、不思議なことに、名盤ブックとかに出ない。ジョン・コルトレーンには、他にもっともっと良いとされるアルバムが多いからね。歴史的意義のあるアルバムってあるでしょ、初めてフリーを世に送ったとか、コルトレーンが珍しくバラードをやったとか。これは、彼の業績の中のひとつのヴァリエーションというようになっているんだと思う、識者のなかでは。僕にとってはこれなんだけどね。見方をかえると、佐山雅弘の趣味がライブ寄りで、つかみのいい、派手なものが好きっていうことなんだよ(笑)。
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