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| 1998年、私は東京のとあるレコードショップで働いていた。当時人気絶頂だったスマッシング・パンプキンスのギタリストだったジェイムス・イハのソロ・アルバムは、人気バンドのメンバーのソロ作の割には、さほど大きな宣伝もなしに、ひっそりといつのまにか入荷していた。 ひっそりと入ってきて、ひっそりと売れていった作品。そして、店内でBGMとしてかけていた時もひっそりと流れてて、店内の空気や風景にあまりにも自然に溶け込んでいた。まるで誰かに衝撃を与えることをひたすら避けているかのようにひたすら穏やかでさり気なく流れている音楽。ギタリストのアルバムにしては、いかにも「ギターを弾いています」といった感じもなく、また、人気ロック・バンドのメンバーのソロ作として考えても、ロックな空 気というのは希薄だ。いや、特定の「何者か」を感じさせるような気配は微塵もない。ただ淡々と「良い曲」が「良い具合」に流れている。そんなささやかすぎるほどささやかなのがこの作品だ。 私は当初、何の引っかかりもなしにこ作品を耳にして、そして忘れた。そして何年か経ち、何故か我が家にこのアルバムがやってきた。妻が家に一人でいる時に、この作品の中の曲のクリップがテレビに映っていたらしく、激しく感動した口調で「あのスマッシング・パンプキンズっていバンドのギターの人の曲すごくイイよ!」と妻が言うので、「うん、あれはイイよ。」と言いながらも「いいのはわかるけど、そんなに感動するほどいいかなぁ・・・? 」などと思いながらその日は何となくの反応をしたのだが、それから一週間後、自宅で聴くジャイムス・イハの音楽は、素晴らしく胸を打ち、素晴らしく感動的で、以前とは別物の如く響いた。それから自宅や車の中など、いろんな場所で聴いたが、聴く毎にその素晴らしさが染みてくる。何度となく「あの時のアレだよね」と確かめるようにジャケットをしげしげと眺めた。 お店という不特定多数の人間が混在し、様々な雑音が多い空間で聴いた彼の音楽は、風景や雑音に音がかき消されていた。ところが部屋や車内という、あまり人のいない、密閉された空間で聴くと、不思議と彼の音は別物のような存在感がある。「この存在感は一体何だろう?部屋で聴くと何でこんなにいいんだろう?」と、私は随分と長いこと考えたが、ある日部屋で一人でーっと聴いていて突然その謎が解けた。要するに彼(彼の音楽)は素朴で誠実なのだ。素朴な人が訥々と話す言葉は、大勢でガヤガヤやっている時はどうしても派手で雄弁な人の言葉より目立たない。けれども「何か大人しいけどイイ人だね」っという印象はとりあえず残る。不特定多数の人間が出入りするお店という空間でジェイムスはガヤガヤの向こうで訥々と語るだけで、聴き手に「静かにしてくれ」とも「俺の魂の叫びを聴け!」とも 言わない。ところが自宅や車内でサシで、もしくは話の分かる少人数で彼の音楽と向かい合うと、彼の言葉はとても誠実に、真摯に胸を打つ。 その語り口は常に優しいが、綺麗事や夢物語ばかりを並べるような軟弱なものではない。最初の一曲目から最後の曲まで、一切サウンドが変わらず、音色も変わらず、歌い方も変わらず、一貫してミディアム〜スローの曲で統一されていることが、逆に彼の強い意志と自己の音世界に対する並々ならぬこだわりを感じさせる。この、一見なんでもないようなポップなアルバムに、これほどまでに強い意志がある。だからこそ私はこの作品が大好きであるし、いつまでも「いいね」と言いながら聴きつづけると思う。
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| James Iha Let It Come Down 」VJCP-25373 スマッシング・パンプキンズのギターリストである「ジェームス・イハ」のソロアルバムである。 しかし、そんな事はどーでも良い。一人のソロアーティストとして最高に暖かいアルバムだ。 スマパンなんて興味も無いし嫌いってな人でもPOP好きなら納得の一枚であろう。 バンドに在籍するミュージシャンのソロなんてロクな物は無いが、このアルバムは全く別物に良質で、春風の様に心地よいギターと歌声に和む事間違いないく、嬉しくなるほどに清涼感溢れた稀に見る傑作である。素晴らしく爽やか!とにかく一緒に唄いたい気分になる。 ------------------------------------------------------------------------------- 「俺も一緒に唄いたい!」 バンドのメンバーが出すソロアルバムなんてロクな物は無い。ましてやギターリストが作るソロアルバムは特別多いが特別につまらない確率も高い。どうやっても現存するバンド以上の作品を作る事が出来ないらしい。今まで何度となく駄作を掴まされて来たので最近はソロアルバムには殆ど興味が湧かなくなったし、だいたいギターリストなんてーのはヴォーカル等のメインに喰われながらも「バンドで本当の音を作っているのは俺だ!」って感じで力入りすぎて「俺にだって出来る」って勘違いから未熟なエゴで作品を発表してしまう悲しいヤツが多い。 しかし、自分を弁えながらもバンドとは別の音で傑作を作れる能力を持つ者も居るのだ。 スマッシング・パンプキンズのギターリストである「ジェームス・イハ」のソロアルバムはそんなアルバムである。 私はスマッシング・パンプキンズには全く興味も知識も無いが、このアルバムを聴く限りジェームス・イハは良いヤツだと勝手に思ってしまう。善人が作った音楽は結果として音に反映するのだ。 素晴らしく完成されたメロディーに無駄の無いギターが絡み、時に叙情的に鳴る鍵盤楽器の数々には、溜め込み練りこまれた世界が完璧に広がっている。とにかく音の質感が最高に良いアルバムだ。 ロックとは使命感の中で苦悩し戦う事が重要な要素であるが、役を離れた音の心地よさは別物として評価に値する素晴らしい作品を産むことも実感する。 決して束縛から離れた自由な姿では無く、力が抜けたわけでもなく、単純にギターを抱いて唄う事の快感を聴き手に感じさせ、ギターてのは本当に良い楽器だと今更ながらに痛感するのだ。 そして私にとってジェームス・イハのアルバムは春なのだ。温度に気を使う事も無く普通の姿で過ごせる圧倒的に暖かい音楽なのである。そして善人であり正義なのである。 ここまでの能力が有るのなら、さっさとスマパンから独立してソロアルバム作ってくれた方が私は好きだな・・
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