ニーナ・フローリンは、ものすごく歌が上手いの。デビュー当時からかなり注目していて、全作聴いている。ポップスとかソウルとかというより、やっぱり彼女はジャズだな。 で、これは最新の4枚目で、スティービー・ワンダーの曲をカヴァーしているんだよね。昨年、ケイコ・リーと一緒にライブをやったときに、その準備のためにずっと封印していた「キー・オブ・ライフ」を聴いてからというものスティービーを耳にすることが多くて、時代的に「やっぱりキテるな」って思うね、あのサウンド感が。 この人の作品を聴いていて気持ちがいいのは、もちろん彼女が上手で表現力もあるからだけど、それ以上にバンドサウンドだっていうところに理由があるんだろうな。有名なスタジオミュージシャンを使ったりしていなくて、最初からバンドなの。そのバンドがいいんだよね、センスもとびきり良くて。集められたミュージシャンが、はじめまして、っていうんじゃなくて、ごく自然にいつもと同じことをしている感じ。だから"俺も明日からはもっと溌剌とするぞ"みたいな勇気をもらう。でも、決して力んだりはしない。聴いているとすがすがしくて温かいものが内側からわいてくるというか。そういうところも含めて好きなんだよね。美奈子(吉田美奈子さん)にも紹介したんだけど、すごく気に入ったみたいで、よく聴いているって言っていた。聴いた後のすがすがしさを彼女も感じているんだと思うよ。 俺はね、自分のものもそうだけど、アルバム(レコーディングしたもの)っていうのは、それを作った時の時間の記録なんだと思っている。いつなのかは別として、その作品を録音した時間が、それを聴くことによって再現されるという感じかな。"なにがなんでもこれはいい"、"このアルバム命"みたいなのって以外と少ない。聴いている瞬間が大切だから、同じアルバムでも聴いているときの気分で変わることもあるし、そのとき感じるものをもらっている。 しかし、日本ではそんなに売れないだろうな、ニーナ・フローリン。偉そうに言うわけじゃなくて、日本はネームバリュー、ブランド重視だからね。残念だけど。
- キー・オブ・ライフ / Stevie Wonder
- 文中で紹介されているアルバムについて、こちらで詳しく語っています。
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