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| 天にとどく声 火山灰で固まった岩だらけの道。あちこちの巨大な岩石に黄色のペンキで 大きく×印が塗られている。この黄色にマークされた巨大な岩をだどって さらに急勾配を登っていく。 一歩一歩と足をすすめるが、スピードをあげて進んでいるので、 息があがりそうになる。 足元から顔をあげて前方を見ると雲のなからから時々山頂が顔を出す。 息が切れてついに立ち止まる。この急斜面さえ登ればと思うけれど かなり苦しい。山頂へ続く最後の急勾配だとは何度か登っているから わかってはいるけれども苦しい。汗が身体のあちこちから流れて いるのがわかる。振り向いてあとからやってくる研修の先頭集団が 100メートルほどのところまで来ている。 今回の私の登山での役割は写真撮影。 先に登って斜面からあとに続く研修集団の写真をとらないといけない。 もう一度歩き始める。ようやく山頂にかかる岩にたどり着き、 カメラの位置を決めて岩に腰を降ろして先頭集団を待つ。 先頭から最後尾まで懸命な表情を写真におさめないといけない。 この先頭から最後尾までを均等に写真におさめるのはかなりの苦労だ。 いつも先頭から最後尾までを登山しながら動きまわらないと撮れない からだ。 プロの写真屋さんも一緒にきているが、イメージしているショットが 違うので、一緒に動けないのもつらい。 先頭をひっぱる同僚の顔の輪郭がようやく見えてくる。この同僚も 苦痛に少々顔がゆがんでいる。この同僚は右足の大腿部を登山の一週間 前にテニスで肉離れをおこしたまま登っているからだろう。 下見で7月に登ったときは平気な顔をしていたし、下見のときは ほとんどの写真を彼が撮ってくれたおかげですてきなプレゼンテーション をスクリーンで見せることができた。 ようやく全員が1789メートルの久住山頂に登り、絶景にため息を ついたり登ってよかったなどの声が聞こえる。 今まで登った中ではたぶん最高の天気だったと思う。 かなりの眺望でガスもほとんどでなかった。みんなガスガスって言って いるけれど、これは雲だからな。と思う。 私は集団から離れて山頂から天を見上げる。青い空に白い雲が流れる。 私はこんなことは初めてだったが自然に両手を天に向け祈った。 いろんな記憶が流れてきて、またやってくる。 いろんな言葉もやってくる。忘れて言葉もたくさんやってきた。 「人が祈るときそれは宇宙を動かしていることだ。」とか 「山のてっぺんで天使に会うには手を出しすこと。すっと冷たい ものがなでていく」 いろんな場面や言葉が流れていった。 翌日かなりの疲れを感じてバスから職場へもどり解散式を終え 家へと戻った。 疲れた身体を横たえて、自分で編集したCDを適当に流していると クリスレアの 「AUBERGE」から選曲している3曲が流れてきた。 GONE FISHING 〜SING A SONG FOR LOVE TO ME〜HEAVEN〜 ゆったりとしたうねるベースに透明なスライドギターとしわがれた声 がとってもゆっくりと流れ、固まっているものをどんどん溶かしていく。 何が固まっていたのかはわからない。でもどんどんそれが溶けていった。 とろけるようにうねってくる音の波が雲を漂うようだった。 「愛を歌ってすればすべて大丈夫だから。」 「前にはまぶしい光、うしろには暗闇、そうして見上げると 天国がある」 そんな風にいろんなものをとかし漂って時間さえとかしていった。 私は山頂の青い空と白い雲を思い出し、 それからその向こう側にある大きな大きな流れを感じた。
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