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| 杉本恭一がレコメンドする1枚 ベックは、デビューしたときから結構注目していたんです。1、2枚目はみんながいいと言うからとか、話題になっていたからなんとなく聴いていたというのがあったけれど、これは本当に大好きで、2ヵ月に1回くらいは今でも聴いているかな。このアルバムのツアーのとき、渋谷公会堂に見に行って、そのイメージも混ざって残っていてすごく好きです、ジャケット以外は。ベックはね、音楽はすごく好きなんだけれど、顔はだめ、甘ったるくて。これの前の二枚では顔が出ていなかったし、まだライブも見ていなかったから、ベックがどんなルックスかって知らなかった。ひがみですけどね、もちろん(笑)。 これはメジャー3枚目で、いわゆるベックのパブリックイメージとは違っているんです。宅録で、レコーディングや制作過程のことまで詳しくは知らないけどそういう宅録っぽい感じのつくりなんですよ。それも非常にいいなあと思って。最初はインディーで出そうとしたけれど、いろいろな事情が絡み合って、結局それが不可能だったというもの。 きっとあれだけビッグネームになった後だったからっていうのもあるんじゃないかな。で、このあとはまた、1枚目、2枚目のベックの感じに戻っていく。このアルバム以外は、どっちかというと、「元気」ですよね。舞台で、バンドを引っさげて踊っているような。これは、アコースティックだったりカントリーだったり、それを宅緑っぽい感じでやっている。メジャーなベック、とか、コマーシャルな感じというイメージしか持っていない人には、意外なものかもしれない。 でも、いちばん新しいアルバムも、フォークというかアコースティックっぽいものだけど、それはあまりしっくりこなかった。これ(『Mutations』)はもう、アレンジも音色も曲も歌も全部、一アルバムとして好きですね。好きな曲ばかりだけど、「Tropicalia」が一番かな。ガットギターの音がものすごく好きなんですよ。レピッシュでも、デビュー当時から、アコースティックをやるときは、俺はガットギターを使ってるんだけど。で、このときのコンサートツアーも、弦の人やガットギターの人もいて、そういう編成でおもしろかった。ステージで、ダサいところも。踊るんだけど、下手なんですよ(笑)ベックがアコギで、他にギタリストがいて、パーカッションがいて。けっこう大掛かりな編成だったんですよ、このアルバムを再現するために。使われている楽器、全員集合でやっているわけだから。 このアルバムのリリースは5年前。レピッシュがユニバーサルビクターに所属していたときで、ベックのCDはサンプル盤をいただけた。そうでなくても買っていたと思うけど、サンプルのほうが早く聴けるでしょ。でも、サンプルでもらったものは、時間がなくて貯めこんでしまうこともあって、それをツアー中に一気聴きしたりしますね。そんななかで当りがあるとうれしいですよ。 この数年、3、4のバンドでツアーを回っているけれど、その移動中でも、バンドが変わるたびに『Mutations』はかけています。みんな好きですね、これは。ベックに関してはこのアルバムが好き、という人が俺の周りには多いような気がしますね。俺は、逆にこれを聴いて、これより前のアルバムもすごく好きになった。「この人、すごいメロディーメーカーなんだ」って改めて感じたし。 俺は、整理とかができなくて、CDもぐちゃぐちゃにしまってしまう。でも、新譜を買ったときや、よく聴くチャンスがあるもの用に、別の棚を用意していているんですよ。この曲だけ好きというアルバムだと、ぐちゃぐちゃな棚のほうにいっちゃったりするけど、これは、その「別の棚」に定番として入っています。
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