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| 僕は戦場というものを知りません。 それは体験として知らないという事なのですが。 空間を切り裂くように「1,2,3」が始まります。 冒頭に響くハーモニカは、攻撃のファンファーレのよう。 この歌は、まるで絨毯爆撃のような音でもって、圧倒的な世界を広げていきます。 それは、閉鎖的で淀みまくった日常を爆撃機で破壊しながら、そこに理想の世界を歌いかけているかにも聞こえます。 「閉鎖的で淀みまくった日常」からの脱出、これが初期の中村一義さんに対して僕が抱いていた印象でした。 このアルバム『ERA』は、それまでの作品から大きく離れた地点で鳴っているように感じられます。 彼がそれまでの環境から脱し切れたのか、そしてこのアルバムで鳴らした音がそれまで彼が鳴らした音と比べて上なのか下なのか、それは僕にはわかりません。 ただ、このアルバムの始まりである「1,2,3」が、混沌とした世界を突き破って青空に向け歌うような印象は、絶対だと信じています。 冒頭にも書きましたが、僕は戦場を知りません。 そんな僕が、無知である事、そして不謹慎である事を承知の上で書きますが、 今、イラクの地においてこの歌が鳴らさたとしても、僕は違和感を感じません。 僕は、「絨毯爆撃のような音でもって、圧倒的な世界を広げていきます」という言葉でアメリカの肩入れをしているのではありません。 白紙的な状態で、あの地にこのメロディーと言葉が響く事に理想を求めているのです。 それは、中村一義さんの「博愛」と同じものだと、僕は思っています。 このアルバム『ERA』はとにかく佳曲揃いです。 EELSが聞こえる?BECKが聞こえる?WEEZERが聞こえる?その他いろんな既知の響きが聞こえる? そんな事はどうだっていい、そう思わせる程の世界です。 「1,2,3」「ショートホープ」「虹の戦死」「素晴らしき世界」という流れに、一つの戦いの始まりと終わりを見るのは、あまりに短絡的すぎるかも知れませんが、1st『金字塔』から始まった中村一義さんの表現が『ERA』でひとまずの区切りをつけているように聞こえるのは、偶然の一致ではないと思います。 曲世界の素晴らしさに加えて、このCDのブックレットも素晴らしいです。二重折りになった歌詞カードの裏面にえもいわれぬ存在感を持った写真が隠されています。 こういう作品が「消費」されることなく生き続けていくことを望みます。
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