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究極の自然体 音楽業界で仕事をしてもう随分長くなるけれど、あるアーティストが売れたときの業界の内部の反応は、不思議だなと思うことがある。ヒット曲が出て、新たなスターが生まれることは、基本的には良いことの筈なのに、嫉妬の混じった嘆息と共に「あんなのが売れるんだからなあ」と語られることも少なくない。音楽に個人的な好き嫌いは付きものだけれど、別に誰かが売れたのを、悪く言うことは無いのにな、といつも思う。 そんな業界でも、ヒット曲が出た時に、利害関係の無い人たちも「良かったよねえ」と笑顔で語られることがある。たとえば「ロビンソン」がチャートを駆け上がったときのスピッツ。存在を知っていた人は、「やっと売れたよね、良かったね」とみんな喜んでいた。サニーデイサービスの時もそうだった。まだ「渋谷系」という言葉が残っていた頃だったけれど、セールス的な成功を、みんなが歓迎していた。 そんな風になる少し前に、サニーデイのライブを観たことがある。地方出張のついでだったと思う。札幌の小さなライブハウスは満員だった。CDで楽曲は聴いていたけれど、彼らに関する情報は、ほとんど持っていなかった。 ライブを観ていて驚いた。プロのバンドとは思えないくらい「だらだらした」進行。よく言えば、肩に力が入っていない、悪く言えば、だらしない感じ。曽我部くんを中心とした、ゆったりとした時間の流れに、観客が身を委ねていた。新しいシーンからバンドがブレイクしていく時は、ユーザーとの間に「文化の共有」や、ある種の「共犯意識」があるものなのは知っていたけれど、その時のカルチャーは、僕の知らないものだった。野暮を承知であえて言葉にするとしたら、音楽に対して自然体に接している感じ。生活の一部に当たり前に音楽がある。これは、簡単にできることじゃない。武道の極意と似ているかもしれない。普通でいることは難しいことのはずだ。 マイペースで長くやっていく感じのバンドだと思っていたら、解散は意外に早かった。曽我部恵一ソロの音楽も悪くないけれど、僕はサニーデイの頃の気分が、「ちょうど良い」感じがして、好きだ。 このアルバムは、名曲がまとまったベスト盤。 「喫茶ロック」という流行り言葉までできて、日本語バンドを再評価する流れが続いているけれど、そのきっかけになったのは、僕はサニーデイの存在だったと思っている。 特にやることのない休日。自分の部屋でゆっくり聴いてみませんか?
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