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M's 2nd / M's(マサちゃんズ)フィーチャリング佐山雅弘
2003.8.21 VICJ-61140 ¥ 3,150 (税込) CD
ブルー・イン・グリーン / 枯葉 / ウィッシュ・ユー / エクステンディド・プレイ / ドント・レット・ミー・ダウン / マイ・フェイヴァリット・シングス / 煙が目にしみる / ソーラー / イン・ザ・ダーク、ビフォー・ダーク / リトル・ガール・ブルー / ファイン・ロマンス〜ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト / クワイエット・ムーン 


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演奏面、録音面でいうと今回のアルバムはベースアルバムだと(喜びと誇りをもって)思っている。ピアノの高音部側でベースを弾き、2m向こうにドラムセット。ライン録りはまったくせず、それぞれのマイクにかぶりあった素材から音像をくっきりと浮き立たせる岡エンジニアの技量にも脱帽だが、長年ライブで鍛えたパーマネントバンドだからこそできる分厚い音だという自負もある。ますます磨きがかかって自信たっぷりにリラックスしてスイングする小井のベース。ただいま絶好調なのが小井政都志。前作での”Daddy Blue”がほぼ生まれて初めての作曲(40歳を超えてから!)。味を占めてかそれ以来M’sに持ち込んだ新曲はすでに10近い。僕達二人が逆立ちしてもこの世に誕生しようのないメロディなのである。”m9 In The Dark ,Before Dark”の歌謡性、”m3 Wish You”のベーシラインのユニークさを見よ!こういうところに作曲の面白さ、素晴らしさ、持ち寄るバンドの楽しさがある。ウッドベースの音がこんなにリアルに気持ちよく録音されたジャズアルバムというのは滅多にないと言える。そしてそれはダイレクトにトリオの輝きになっている。以下それ以外の曲を見ていこう。

“m1”3拍子を2小節ワンパックにして8分音符12個。これを7/8と5/8の交互にとるパターンで演奏している。奇数拍子による緊張感と独特の疾走感に乗ってメロディはゆったりと流れる。ピアニスト的には大きな3/2を感じながら早回し映像の雲の流れを見るようにリズムセクションのグルーブを身体に受け入れる。 
“m2”は大胆なreharmonizationを施して原曲から程遠いアドリブ展開をしても揺るがない強さを持った楽曲。non diatonic harmony のアレンジでは、アドリブラインは diatonic でしかもあてがった non diatonic chord に合致する音をたどって歌い上げるのがコツです。そしてあるコーラスでは思い切り機械的(論理的)フレーズで攻めたりするわけ。きれいなだけでは美しくないってこと。
“m4”実にリリカルな新曲。M’sのために書き下ろされたそれは何度プレイバックを聴いても僕自身が作ったような錯覚に陥る。大坂の作曲能力については改めて述べるまでもないがそれにしても佐山の特徴、長所を十分に引き出すあたり、その能力の広さ深さは計り知れない。M’sのM’sによるM’sのための曲が生まれる状況というのは、バンドとして旬を迎えてると言っていいと思う。
“m5”はいじりたくないビートルズチューンの中でも稀な”解体”に適した曲。まず歌詞が少ない。勿論そこにこめられた重い意味ということはあるけど一行4回のリフレインを限りなく拡大解釈できる余地があるのと”nobody ever loved me like she does”のくだりをベースラインにとったことでちょっとしたユーモアが出せたと思う。そして全てをただのアドリブの素材にしてしまう豪快さ、潔さ(ある意味乱暴さ?)もまたジャズの楽しみのひとつなんである。
“m6”譜面上は4分音符の連続だが、丁寧に歌詞をたどると、韻を踏んでる”kitten”と”mitten”では当然シンコペイションするし、”tied up with strings”の前の4分は休符であることなど発見が多い。というより手がかりになってグッとラクになる。3拍子ながら”Cherokee”の”リズムのみ倍で進行する”という手法と、M'sで発展してきた time moduration を組み合わせてアレンジした。
“m7”はサビのフレーズが解決する5度音が3つ続く。和声的にもメロディ的にも5度音1つの方が納まりがいいのだが、歌詞的には”dought my love(愛)”と”(with-)out my love(恋人)”とで脚韻を踏みながら重要なパートになっているので、迷った末に踏襲した弾き方をしている。
“m10”は最初の8小節の間にトニック音が14個も出てくる特殊なメロディ。それによって静かな諦観がよく表わされている名曲なんだが、それだけにインストでの歌い方が難しい。そういう時、歌詞に準じると、思いが込められてニュアンスが出しやすいわけ。
“m11”この2曲はもともとひとつのミュージカルの中の曲で、ラスト近くではアステアとロジャースがそれぞれの曲を同時に歌う、ことをヒントにインスト的に、というよりミュージカルアレンジ風にしたててみた。
“m12”僕自身は何年か前に作った”Floatin' Time”以来、この種のロマンティックバラードは書けなくなっているのだった。作曲が出来ない時は編曲や習作をして次の霊感の時期を待つのだ、というヒンデミットの教えに従ってはいるのだが、そんな中生まれたこの曲は仕上がりはおとなしいながらチャレンジャブルな作曲。Dmというひとつの色を、トニックにしたり、2度マイナーに扱ったり、3度マイナーにピボットして転調させたりする。しかも載せられているメロディは固定ド的に同じくしつらえてあって、移動ド奏法の僕としては地軸のずれるようなグラリとした横揺れ感を楽しんでいる。


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2003/8/8 佐山雅弘
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