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時代を感じさせる音楽と、時代を超越した音楽がそこには混在している。 カンのファーストアルバム「Monster Movie」。その作品が「生まれた」のは1969年のドイツ。メンバーのほとんどがロックを知らない状態で作られたという。ヴォーカルを勤めるのは、黒人彫刻家のマルコム・ムーニー氏。この人も音楽に関しては素人だった。彼らが一体どんな音楽を作り出していたのかというと、4曲しかないので1曲ずつ感想を述べさせて頂く。 ●Father Cannot Yell オープニングを飾る、強力なジャーマンロックの一撃。 弛緩したベースが強固に刻む反復のリズムと、それをあおるようなムーニー氏のはじけたヴォーカルは、鼓膜を突き抜けて脳細胞を直接的に刺激してくる。まるで何かの呪文のようだ。ギターやシンセは何かの効果音のように飛び交い、呪術的な空間をさらに拡張させている。そしてこの時代にして圧倒的なグルーブ感覚。強烈としか言いようが無い。 ●Mary, Mary So Contrary バラード調の曲、と、いってしまうとそれまでだが、軋む様に奏でられる弦楽器と、喉の奥から搾り出すようなムーニー氏のヴォーカルが、バラードを完全にあさっての方向へと持って行ってしまっている。そのくせ、そこいら辺のバラード曲よりも、不思議と哀愁が漂ってくるのを感じるのはなぜだろう。情念の塊のような曲だ。 ●Outside My Door この一枚の中では最も聴き易い、軽快なロックナンバー。どこかパンクの匂いを感じさせる。ムーニ−氏のヴォーカルのはじけ具合はさらに増しており、既に血管の二本や三本は切れているのではないかと思われる。皆のコーラスと、ムーニー氏の叫び声に、民俗音楽で使われそうな鐘の音が鳴って終了。「ノリノリのナンバー」というとやや古臭い感じがするが、ちょうどそんな感じだ。でも、古臭い割には聴いていて無性に楽しくなる。 ●Yoo Doo Right ラストを飾る約20分のプログレ的大作。ただし、プログレというと当時の時代を感じさせるが、この曲は一般のプログレ的イメージとは全く違っている。同じフレーズ、同じメロディーを繰り返しだらんだらんと演奏しているが、そのうちに音が徐々に、捻じ曲がるように変質化していくという、摩訶不思議な展開。ムーニー氏は既に血管が切れすぎたのか、声がどんどんかすれて怪しい感じになっている。バックの演奏も、どんどんと解体されていくように音数が減り、最後には骨と皮だけになったようなムーニー氏の声と、ドラムの音が虚ろに響くのみとなる。最後に輸血でもするかのように再び演奏が始まってそのまま幕引き。その時の気分によって聴いた時の質感が変わるような気がするが、どんな時もこの曲から受けるヘンテコなトリップ感覚だけは抜群で、最もキケンな香りのする一曲である。 聴き終わってから改めてジャケットを眺めると、そこにはのっぺらぼうなマジンガーZの如き戦闘ロボットが、銃口をこちらに向けているという奇怪ぶり。音の透明度や演奏の細かい所は当時の時代を感じさせるが、1969年という時代にしてこの圧倒的な個性と現代的なグルーブ感覚はスゴイ。ちなみに、ヴォーカルのマルコム・ムーニー氏は、その後発狂してバンドを脱退。変わりに加入したのは当時ヒッピーで世界中を旅していたという謎の日本人、ダモ鈴木。やっぱりこのバンドはスゴイ。
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