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申し訳ない。このレコセルにはジャズの愛好家の方々がたくさん、さらにはプロの方々までいらっしゃるのに、ジャズの事なんぞ全くド素人な(もちろん、それ以外の音楽ジャンルに関しても自分はド素人だ)、ただの半端な音楽好きに過ぎないこの自分が、恐れ多くもかのMiles Davisの「Bitches Brew」を語ろうというのである。これはなんとも愚かで無謀な試みであるか。 この一枚をレコセルに登録する時に一応確認してみたが、まだ誰もこの「Bitches Brew」のレコメンド文を書いていないようであった。それはおそらく、この作品があまりにも有名過ぎて、既にいろいろと語りつくされているために今さら改めて書く必要が無いから、あるいは、あまりにも有名であるがために、自分のような中途半端な音楽好きが寄ってきやすいので、本来のジャズ愛好家の皆様が敬遠するからではないか。何はともあれ、真に勝手ながら語らせて頂く事には変わりは無い。御無礼。 Miles Davisがどんな人で、この作品がどういう経緯で創られたかについては、既にあらゆるところで語られているはずなので、ここでは省くことにさせて頂く。 自分が言いたいことは、自分がこの「Bitches Brew」を初めて聴いた時に感じたのは、込み上げる様な感動、ではなく、一塊の激しい焦燥感であった、ということだ。そう、焦燥にかられたのである。 なぜ、自分は激しく焦燥にかられたのか。その感覚は自分が浪人時代に感じたあらゆる焦燥感とは別物であった。つまるところ、これからの人生に対する焦燥感。あるいは、試験当日の朝、プレッシャーから腹を下し、あわてて途中の駅で下車してトイレ待ちをする時の焦燥感。なんとかたどりついた試験会場で、試験5分前に受験票を無くした事に気付いた時の焦燥感。仮の受験票で、いざ問題用紙を開いた瞬間、「やべぇ、今年の問題、難しぃー」と思った時の焦燥感。マークシートの箇所が一列ずれていた事に気付き、必死に消しゴムでゴシゴシする時の焦燥感。試験終了5分前になった時の焦燥感(「ええい、後はみんな『A』にマークしちゃえ!」とか思う)。最後、掲示板で自分の受験番号を必死に探す時の焦燥感・・・etc。Miles Davisの「Bitches Brew」を聴いた時に感じる焦燥感は、そのいずれでもないのだ(それにしても、我が浪人時代というのはこんなにも焦っていたのか!)。 自分はこの焦燥感について、追われる羊をイメージした。牧羊犬に追われる羊だ。マイルスのラッパは牧羊犬の咆哮だ。彼が吠えれば、羊はわけも分からず動かされる。そして追われる。追い立てられる。焦る。激しく焦って走り出す。そして、いつのまにか追いやられてしまう。マイルスの「Bitches Brew」は、心を走らせる。しかも、走らされてどこかに追いやられてしまったような気持ちになるほど圧倒的だ。そして同時に、なぜだか心地よいのだ。ヒトは圧倒的なパワーに直面した時、むしろ喜んでひざまずく事がある。羊の心理だ。このままおとなしく牧場主に毛を刈られてもいいと思う。 そういえば牧羊犬といったら、吠えずとも周囲を俳諧しているだけで羊にとってはかなりの存在感のはずだ。マイルスの「Bitches Brew」でも同じことが言える。例えマイルス自身が演奏していなくても、あらゆるパートの演奏でその存在を感じさせてしまう。この人は一体どのようにしてこのような音楽を創り出したのか?どのようにして他のメンバーに自分のイメージを伝えたのか?とか思わせてしまう。それだけ独創的な音楽であるのだが、このままの流れでいくとありきたりな結論しか思い浮かばないので、ここで強引に終わらさせて頂く。なんだか勝手に適当なことばかり言って申し訳ない。 何かに心を、激しく突き動かされる。そんな音楽。
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