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夜が持つ不思議な力というものがある。 深夜、人のいない、明かりも届かないところへ一人出かけていると ちょっとした音や、ほんの微かな光が妙に気になってくる。 夜の闇と、それによってもたらされる静寂は、知覚を剥き出しにさ せ、音や光、或いは動きを捉える感覚を研ぎ澄まさせる。 シェーンベルクの音楽が感じさせるのはそんな闇。夢も希望もない 代わりに、一度その魅力に取り憑かれると、それなしではいられな くなってしまうような、中毒性の美の世界がある。絶対的に低い 温度、それに反して絶対的に高い湿度が、奇妙に捩れ、複雑に絡み 合うメロディーを通して伝わってくる。どんなに想像力をこらして も、光は全く感じられない。闇の中から、不確かな形をした音が、 不確かであるが故、不安と好奇心を煽り、もはや音から逃れられな い呪縛を作る。 聴いててここまでドン底に叩き落とされる音楽はそう滅多にない。 「浄められた夜」は、実は「浄められた地獄」であり。しかしそ の地獄を形成するエレガンス(優しい破壊、淡い絶望、徹底した反 調和.ect)は俗世にも天国にもない。
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