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ユーミンの『Tears and Reasons』というアルバムは、“過ぎてしまったこと”をテーマに歌った一枚だ。1992年に発売されたものだから、このアルバム自体が“過ぎてしまったこと”とされてしまっているのかもしれない。 だったら、よくない。特に「冬の終わり」という美しい曲を、このまま“過ぎてしまったこと”になんてできない。誰かに教えなくちゃ、そう思った。 私はこの曲で、確信した。 季節がめぐって、あの頃を思い出させる風が吹いたりするから、たとえ過去を一番大事に考えていたとしても、今や未来は素晴らしいということ、を。 あの頃を思い出させる音楽が鳴ったりするから、人生はきらめいているんだ、ってことも。 こんな詞の歌だ。 <冬の終わりが来るたびに あなたの文字を思い出す なんだか 鼻のあたりがつんとする 木の芽の香りかしら> この歌の主人公の女の子は、過ぎた学生時代の恋を思い返している。記憶がなだれみたいに思い起こされる感じがうまく出てる詞だと思いませんか? さすが、ユーミン。 別れてしまった彼だけど、後悔はたくさんあるけれど、切ないことを淡く受け入れることができているんだろうな、とこっちは分かる。<木の芽の香りかしら>なんて、言えるのはそういう穏やかさがないとダメだもん。 冬の終わりの匂いとか感じが、その頃もらった彼からの手紙の文字を思い起こさせて、他にも色々なことがあったことをどんどんどんどん知らせてくる。悲しい結末と同じくらいの重りで、素晴らしい瞬間がたくさんあったことを、知らしめてくる。 つまり、こういうこと。 新しい季節は、残酷だけど、希望に溢れている。 全ては変わって、もうあの頃を知ることができない。それでも、似た瞬間があるから、似た瞬間が繰り返されるから、毎日を好きになれるような気がする。 決して同じことの繰り返しなどではないけれど、同じようなことが繰り返されるからこそ、愛することができる人生だってある。何かの不在のまま季節が巡っても、その季節を恨むことなく、逃げもせず、穏やかに見つめることができる方法は確かにあったんだ。
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