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ホントのきもち / 矢野顕子
2004.10.27 YCCW-10009 ¥ 3,150 (税込) CD
行かないで / N.Y.C. / まっ赤なビー玉 / House Of Desire(Burnin' Down) / おいてくよ / Night Train Home acoustic version / Too Good To Be True / Our Lives / Nobuko / Night Train Home 


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テクノ、エレクトロニカファンにとっては、レイ・ハラカミが携わったことで
話題になっている今作。実際、彼がプロデュースした楽曲は、これぞというべき
レイ・ハラカミ節のサウンドに矢野顕子がコラボレートに入ったという
リスペクトの念が感じられて驚く。

驚いたといえば、くるりの岸田繁とのコラボレーションも同様で、近作の
スタンダードな作風から一転したポストロック然とした乾いた質感のプロダ
クションは、おそらく岸田の意図を100%汲んだものだろう。ある意味で
トップの位置にいる、評価と地位を持った人が、ここまで積極的に
シーンの前線とのコミュニケーションを図るとは思わなかった。

前述の二人について、彼女はインタビューで「ジャンル云々ではなく、
音楽的な才能のある人達だ」というような趣旨の発言をしている。
彼らのミュージシャンとしての「エッジ」の部分が、矢野顕子の中にある
才気に灯をつけたということか。

それにしても、NYセッションでもハードな印象を残す今作の尖った感触は
一体どういうことだろう。やはり居をかまえているNYテロ事件、その足跡が
彼女に大きなインプレッションを投げかけたことは紛れもない事実なのだろう。
歌詞の部分でも断片的ではあるが充分示唆的な、直接的な言葉を用いて、
メッセージが投げかけられている。

一人のミュージシャンが何事かに触れ、それを自分の思いとして表現する、
という鮮度の高さと重さが伝わってくる。今作が彼女の本質だとは思わない
けれど、懐の中にしまってある「ナイフ」の一端であるのは確か。興味ある方
はピアノでの弾き語りのみによる何枚かの作品、特に「HOME GIRL JOURNEY」
を聴くことをお薦めします。

(ura from realm mag)


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2005/7/23 realm mag
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《ただの私で満たされた世界》

「JAPANESE GIRL」でデビューした矢野顕子が
ニューヨークへ活動の中心を移してもう15年になる。
25枚目(!)のオリジナル・アルバムとなる今作にも
「N.Y.C.」(New York City)という曲が収録されているけど、
ぼくにとっていちばん興味深かったのは1曲目「行かないで」で
日本の(しかも、いわば古きよき日本の)牧歌的な風景が
歌われているというまぎれもない事実だった。

 変わるものは変わればいい
 居たいものは居ればいい

「N.Y.C.」という人種と文化のサラダボウルのなかには
めまぐるしく変遷していく習慣やモラルの一方で
細々とでも永く生きつづけているものもあるのだろう。

だから、きっとそのまま矢野顕子のなかにも
故郷である青森や現在住んでいるN.Yをはじめとした
「変わるもの」や「居たいもの」がたくさんあって、
彼女はそれをずっと抱えているんだとおもう。

くるりの岸田繁やレイ・ハラカミといった、
それこそ自分の息子ほどの年齢のアーティストと
コラボレーションすることで生まれたこのアルバムも、
おそらくはそういった取捨選択の姿勢に拠っている。
(岸田に至っては10曲中6曲に作詞作曲で関わっているし、
くるりなどでお馴染みのエンジニア、上原キコウも参加)

「ホントのきもち」というタイトルにも顕著なように、
収録曲それぞれに矢野のさまざまな表情が浮かびあがってくる。
原風景を歌う彼女、「好きな人がいるのです」と歌う彼女、
「Nobuko」という女性として歌う彼女−−−そこには、
ある状況に縛りつけられることで逆に自由を獲得し、
最終的には縛りつけられているという事実さえ打ち破って
心のままに飛びまわっている人間の姿が見えるかもしれない。

たとえば、女性であること。妻であること。母であること。
もはやクールとか力強いとかそういう形容さえ必要とせず、
「ただの私」に戻ることで新しい世界へ踏み込んでいく、
もちろんずっと前から矢野顕子はそういうアーティストだったとおもう。
けれど、もしかしたらその性質がほんとうにすべてのリスナーを
納得させるに足るだけの力を持ったのがこのアルバムではないだろうか。

ぼくは、そう確信している。


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2004/12/12 chori
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