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白い世界に新しい言葉の色がポタリと落ちた。 それは常に曖昧な色だとは限らない。 フルーティな甘い雨粒はパステルよりも寧ろ自然の原色をしてる。 赤やオレンヂ、濃く澄んだ青、弾む黄色、艶やかな緑、 慎ましい焦茶、滑らかな紫の小さな粒や黒のドット。 そこが白いから、 それらがとても鮮やかに目にとまる。 瞬きをして残る残像。 反転する世界。 灰色の中でも同じように光を放つ色、色。 この甘さに触れて。 翻弄されるやわらかなやさしい渦。 ポタリの波紋。 彼女の甘いロングヘアに鋏を入れ、 少し大人びた風に変わっていくジャケット写真は素敵。 少女が大人になる瞬間を捉えたように素敵。
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《恋する音楽》 キワドイ。 安藤裕子の音楽はとにかくキワドイ線上を ときに冷や冷やするくらいに行ったり来たりする。 不安定な歌声が「もう無理だっ!」ってラインを 突如として軽やかに飛び越えてしまったり、 「まだ引っ張るだろ?」ってところであっさり もう嫌、って放り投げる幼女みたく止んだり。 たぶん女性を好きになれるリスナーなら例外なく 彼女の音楽に恋してしまうんじゃないだろうか。 押されてその気になったらすぐ引いていくバランスは、 いつかBonnie Pinkが歌ったロンドンの天気みたい。 そう、この「Middle Tempo Magic」は 恋とまったくおなじメカニズムで 成り立っているアルバムだ。 きっと安藤裕子は天使と悪魔を隠し持っている。 でもそれは女のコなら当然のことなのかもしれない。 男のコを中心とするならば相対的に周縁であり、 有徴の存在として生きていかざるをえない女のコたちは、 どこかで自分が立つためのラインを必要としてるのかも。 で、そのラインはまさに男のコとの駆け引きに通じるのでは? なーんてことを考えちゃうんだけどね。 特筆すべきは彼女の天性のバランス感覚だ。 「アリ」と「ナシ」のあいだのギリギリ地点ではない、 ちゃんと「アリ」も「ナシ」も織り交ぜつつも、 そうすることでそれぞれの特質や意外性を演出し、 結果的には素晴らしいタペストリーとなる楽曲。 一般的女のコたちがおそらく思ってもうまく言えない、 ふつうならこぼれ落ちていくような感情の断片を どういうわけか掬い上げてしまった歌詞。 すべてがまるで奇跡のような化学変化を遂げている。 ライヴも少なく、まだ全国的な知名度には至らないが、 個人的には椎名林檎に続く「自作自演屋」を期待する。 とはいえ、林檎がデビュー当時10代の「わからなさ」を 武器にしていたのとは対照的に、安藤裕子の場合は 「わかりやすさ」をいったん通過した20代後半になって また一周して戻ってきた「わからなさ」を鳴らせる強みがある。 つまり、共有という名のタフネスを。 必聴。
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