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※世界初のサンプリング・ミュージック 70年代を中心に活躍したドイツの伝説的なロックバンド、カンのベーシストで音響編集も担当していたホルガー・シューカイという人物が、バンド結成直後の68年に録音し、翌69年に早くもソロ作品として発表したのがこの「Canaxis」というアルバムです。ジャケットの裏をのぞくと、「この作品で初めてサンプリングという手法が発明された」みたいな事が英語でさりげなく書いてあります。実際のところ本当なのかどうかはさておき、中身の方は非常に良いです。 まず一曲目の「Boat-Woman-Song」。クラシックの不穏な合唱で幕を開け、それが徐々にこの曲の核となるベトナム娘が歌う舟歌(どうやらこれがサンプリングされたモノらしい)にシフトするのですが、そこに神経を逆なでするようなループサウンドが混入してダークな空間を演出、それらが緩やかな反復の上で徐々に変質し、途中には日本の雅楽の演奏まで入るけどそれもやがて徐々に変化し・・・といった、異文化が交錯する混沌としたサイケ志向のアンビエント作品になっていますが、音のパーツ同士の強弱が入れ替わる過程等、諸々の音響的操作が計算されつくしたバランスの上に構成されているのか、どれもこれも聴き手を惹きつける要素として完璧に成り立っている上に、サンプルされているベトナム娘の舟歌が醸し出すエスニック/アジアンな情緒が巧い具合に引き出され、結果的に混沌感とヒーリング効果が同時に得られてしまうという、実に強烈なトリップ作品に仕上がっています。十数分という長さも全く気にならない。 2曲目の表題曲「Canaxis」も、不穏なミニマル・ループサウンドに、こんどはアジア人男性のおぼしき歌声が流れ、そこに日本の琴の演奏がオーバーラップするという、これまた混沌感とアジア的情緒が交錯する非常に強力な作品です。アジアンテイストを表面的に借用しただけの産業的癒し系ミュージシャン達とちがい、サンプルされたアジアの要素を曲の一部ないし中核として完璧に取り込み、トータルで一つの曲として大成させてしまったこの人のセンスは、68年という時代を考えると本当にすごい。色々と誤解はしているだろうけど、この人のアジア文化に対する憧憬はどうやらホンモノのようです。 3曲目「Mellow Out」(60年に創られ、当時のバンドメンバーにだけ配布されたという曲!)は、ジャズ風のアコースティックな小曲で、前2曲の余韻を味わいつつ、やんわりとクールダウンするような、流れとしては全然悪くない出来。 この3曲が全部なのでヴォリュームは少ないようですが、その分ディープに出来ているので満足度は充分。同じジャーマン系のクラフトワークやクラスター、及びマニュエル・ゲッチングの初期作品群と比べても断然分かりやすい(テクノに耐性が無いとジャーマン系全体が分かりにくいかもしれないが・・・)上に、インパクトもデカイ。68年の時点でここまで到達したというのはホントすごいですね。ホーミーを引用したKLFのチルアウト名盤「Chill Out」(93年作!)なんかも、まさにホルガー・シューカイの切り開いた道を踏襲したに過ぎなかったのですね。このテの作品に興味がある方は是非聴いてみてください。ジャーマン系の有名どころを一通り揃えている方も、これだけは逃さず抑えておくべき逸品です。
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