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ジプシー66 / Gabor Szabo
2005.2.23 UCCU-5271 ¥ 1,995 (税込) CD
イエスタデイ / ザ・ラスト・ワン・トゥ・ビー・ラヴド / ジ・エコー・オブ・ラヴ / ジプシー’66 / フリー・マーケット / ウォーク・オン・バイ / イフ・アイ・フェル / ジプシー・ジャム / アイム・オール・スマイルズ 


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皆さんは「ジャズ・ギター」と言えばどういった音を思い浮かべる
だろうか?都会の夜を感じさせるブルージーでやるせない音、
激しくドライヴするノリの良い音、どれも間違いなくジャズ・ギター
を形容する言葉であるが、そんな音を想像すると、ちょっと期待を
裏切られるかも知れないのが、ガボール・ザボのギター・スタイル
。だが、彼のそのあまりにも個性的&深みのある音世界に一度
でも触れると、たちまちとりこになってしまうことをお約束しよう。

ハンガリー出身の亡命者であるガボール・ザボは、それだけで他
のアメリカ生まれの黒人、白人のギタリストとは出自を大きく異に
するが、彼の個性は出自の特異さだけではない。ましてや「ハンガ
リーのジプシー音楽をルーツに持つから」という単純な理由でもな
い。あくまでジャズをフォーマットにしながら、故国のジプシー音楽、
インド音楽、ビートルズやバカラックなどのポップスなど、様々な要
素を取り入れながら無理なく消化し、優れた感性でもって、他の誰
のものでもない、正真正銘のオリジナルな音楽として音を響かせる
。その響きは、ジャズのようでもあり、ボサ・ノヴァのようでもあり、
遙かインドや中近東などの民族音楽のように聞こえる。ザボが凄い
のは、それら様々な国々の音楽のような響きを、音階やフレーズな
どでちょろっと演出するような、小手先の器用さに頼らず、一つの音
の中に全てを凝縮して一気に響かせるところだ。しかもそれが全然
アンサンブルを壊していない。ザボはギタリストである前に、曲全体
のイメージとアレンジをまず先に考える「ミュージシャン」なのだ。

例えばこのアルバムにおける「イエスタデイ」。ビートルズの、あまり
にも美しいバラード・ナンバーを、ザボは原曲のメロディーをシンプル
になぞっただけで、あたかも自分の作曲した曲のようにものにしてい
る。渡辺貞夫の吹く主旋律に寄り添うかのように絶妙のタイミングで
入るザボのオブリガード。音色、フレーズ、タイミング共に完璧である
。計算ずくで発せられるフレーズにも聞こえるが、これはほぼアドリブ
であるという。完全に編曲されたかのようなアドリブを軸にした演奏。
事実「イエスタデイ」は3分ちょっとの演奏であるが、その密度たるや
言葉に表せない。

そしてザボの音色がすごい。空気振動がそのまま伝わってくるという
か、艶のある雰囲気バリバリの音を包み込むような「響き」。これには
正直ヤラれる。音だけで聴衆を世界に引きずり込む人だ。どこの国の
音ともつかない彷徨いの音色。ゆるやかに、しかし必要なときはかな
り生々しく響くザボのギター。まったく無の状態から、この音が入って
来たときの不思議な感覚は、ザボにしか成し得ないものだ。

ザボの音楽はとても聴き易い。ビートルズやバカラックといったポップ
・ナンバーを、彼は好んで採り上げ、そして極めて原曲に忠実に演奏す
る。ほとんどの曲がインストなので、イージーリスニングのようにサラ
ッと聞き流せるが、サラッと聞き流せる音の中に、極めて低い温度で神
経をざわざわと撫でていく特異な成分がタップリ含まれている。ザボは
やもするとBGMで終わってしまいそうなほどポップな演奏をしながら
、聴き手の精神的な深みの部分にしっかりとその音世界の存在を刻みつ
けている。


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2005/3/11 高良俊礼
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