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| CD二枚組、しかも同じ内容のアルバムをメンバー主導のモノラルミック スと、DUB SQUAD、ROVOの益子樹による、ステレオミックスの2バージョン に振り分けた問題作。もともとはハイファイな作風を心がけていた人達の ように思うが、中身の方は3人のプレイヤーがガッチリと組み合ったシンプ ルな音楽。 世の中に流れる音楽は、音楽を使って何かを成し遂げようとする人達と、 音楽そのものによって自己の存在を主張する人達に分かれる。 しかしながら、日本の場合、例えばアメリカやイギリスにおけるポップ ミュージックとキリスト教の対比、みたいな宗教観を描くことすらできぬ というところで、やはり強固な何物か、−−−それは輸入品という依存の 仕方だったり、輸入文化そのものだったりもするだろう。−−−に引きず られながら進んできたのだが、割とその辺を抜けたかなと思ったのは、コ ーネリアスやバッファロードーターの近作あたりからの、ステレオフォニ ックな音像が飛び出した頃からで、しかしながら、彼らは音楽を変換する 「言語」は持たない。 それはシンガーがいないという決定的な理由に因る所も大きいのだろう が、日本にはそういった音楽を精神的な領域まで歌い上げるシンガーは存在 し、原田郁子がその中のひとりに入ることは間違いないことだろう。 今までのクラムボンは、ともすればポップサイドと実験的なサイドの2面 のバランスを、楽曲によっては著しく欠くものもあったように感じていたが、 今作においては見事に合致し、3人が同じ方向を向いてテンションを研ぎ澄 ませている。 音楽がいかに自分達にとって必要あるか、それを証明する音楽に向かって 3人が同じ音を鳴らしている。普通の音楽をやって、楽曲を書いて、レコー ディングするという普遍さがどんなに難しいことか。 ここで用いられる「普遍」というのは、ポップスという意味ではなく、 空気のような、見えなくともそこにあるもの、あるいは見出そうとするもの。 そこに辿り着くために音楽が必要であったと、おそらく当人達は自覚の元で 創作したと思われるが、このアルバムはそうやって音楽に対峙してきた過去 の先人達のエッセンスから生み出されたものだ。 ここにはフィッシュマンズの佐藤伸治の残した音と言葉や、早川義男の意志 も汲み取れるし、もりばやしみほや、さねよしいさ子の鬼気迫る魂も受け取る ことができる。それらを時間軸で並べていった時に、今という時点でクラムボン にバトンが受け渡されている、と。 だから「てん、」というタイトルなのだと思う。確かに重要なアルバムだが、 既に生み出されてしまった安住の「ここ」に止まることをクラムボンは望まな いだろう。これを受け取る側、リスナーがここから何かをすくい取り、それぞ れの音楽をやり続ける明日こそがと。あなたの点と私の点をつなぐ音楽の世界 へようこそ。そしてさようなら。もう一度生まれろ。(ura from realm mag)
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