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ファンの人は(本当に)待ちに待った、Kate Bushの12年ぶりの新作「Aerial」。しかも今回は2枚組という大作。1枚目が「A Sea Of Honey」、2枚目が「A Sky Of Honey」と銘打たれています。音の波形を夕焼けに染まる海の向こうに映る島々に例えたジャケ、パッケージを開くとロンドン郊外と思しきアパートにつるされている洗濯物が風に揺られている図が一面に描かれているというアートワーク。過去の作品と劣らず印象的なつくりになっており、彼女の気合の入れようが伝わってきます。 ではいざ聴かん、とまずは1枚目「A Sea Of Honey」。シングルカットされた冒頭の「King of the Mountain」は壮大にキメているものの、今回のケイトはそれまでの突拍子の無いメロディーラインやエキセントリックな感触は控えめ。ハジケたケイト・ワールドを期待しているであろう大半のファンはちょっと肩透かしを食らうかもしれない。しかし抑揚をおさえ間合いを意識した歌唱が、これまで以上に3次元的な空間の広がりを感じさせる。スタンダードに攻めながらも、どう聴いてもケイトの音楽にしか聴こえない、これがケイトの新機軸ということなのか。歌詞も円周率の歌や洗濯機の歌とかが出てくるし、やはりケイトでしかつくれないスルメ的感触の作風です。 2枚目の「A Sky Of Honey」に来ると、往年のケイトらしいエキセントリックなスタイルが少し復活してます。ノンストップで突き通す2枚目は、どこぞの高原で裸足でひらひらと駆け巡っているような怪しいメルヘン世界が広がり、一枚の絵巻物を見ているかのよう。何かに導かれて高みに飛んでいってしまうかのような、そんな感触がします。鳥の鳴き声とケイトの高笑いに恍惚とする。 実は正直なところ、曲単体の瞬発力や歌唱力はこれまでの作品より劣っているし、全体的に衰えてしまった感じは否めません。しかしながら聴いている瞬間よりも後からじわじわと来るものはこれまでの作品よりも大きいように思います。1枚目で緩やかに入り、2枚目でじわじわと盛り上げていく、そういった長いスパンの中で少しづつ没頭していくかのような構成が、コマーシャリズムに則った上っ面の計算ではなく、表現上の必然として存在している所が非常に素晴らしい。「魔物語」以降は自らもプロデュースに関わるようになりコンセプト志向の作品を出し続けてきたケイトの事、一曲一曲のパンチ力よりもトータルの流れと味わいを重視した作風になるのは自然な流れなのかもしれません。そういう意味では童話をモチーフにしながら豪華なゲスト陣(クラプトン、プリンス、ジェフ・ベックら)が参加したアルバムというイメージの方が強かった前作「Red Shoes」よりもかなり進歩したといえる作品ですね。この作品を単純に「地味になったね」とか「昔の方がもっとはじけていて良かった」等と断ずる人は分かっていない。とにかくファンの方なら黙って買って、そして新たなケイト・ワールドに浸りましょう。はじめての方はまず過去の作品から聴いて見ると良いでしょう。個人的には「Sensual World」辺りがオススメです。
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