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ジャズ・シンガーの世界は「声が良い人」「歌が上手い人」「メロディーを崩すセンスがある人」「表現力豊かな人」など、それこそ百花繚乱、様々な個性を持った歌い手達がひしめく世界である。 その中でジュリー・ロンドンは徹底した”声”の歌い手だ。まるで甘い呟きのように、ハスキー・ヴォイスで旋律を紡いで行く彼女の声には、一度聴いたら忘れられないインパクトがある。どんな事があっても決して声を張り上げたり、派手なスキャットをかますようなことはせず、終始トーンを変えずに、まるで傍らで読み聞かせでもしているかのような、穏やかで優しく、そしてどこか淋しい歌声だからこそ、心の奥底でいつまでも美しく響くのだ。 正直に告白すれば、彼女のアルバムを最初に聴いた時は、声以外のものが全く印象に残らなかった。スタンダード曲の美しいメロディーも、伴奏者の小粋な演奏すらも全く記憶にない、その代わり彼女の声がどんな感じだったかだけが強烈に印象に残った。それは曲が良くないとか伴奏が薄いとかでは決してなく、曲も演奏も静かに押しのけてしまうほど、彼女の声の存在感が凄かったのだ。 そんな彼女の”声”の素晴らしさを、たった一本のギターの伴奏のみで心ゆくまで味わえるアルバムが本作「ロンリー・ガール」だ。 どの曲もしっとりと、全く同じ温度で最初から最後まで穏やかに流れて行くこのアルバム。実際どの曲も同じ曲のように聞こえたりもするが、曲がどうとか歌がどうとか、そういう細かいことはハナから問題ではない。このアルバムはただひたすら彼女の声の生々しくさえある妖艶なハスキー・ヴォイスと全体の気怠いムードにウットリするため”だけ”のアルバム。例えば自室で真夜中に、酒でもチビチビやりながら聴くのが一番良い。私のように酒が飲めない人間でも、お茶をすすりながら彼女の声に酔い、ムーディーな晩酌の気分を楽しむことが出来るのだ。 凄いテクニシャンなのだが、パッと聴きはジュリーの声にひたすら寄り添っているだけのように思えるアル・ヴィオラのギターも実は凄い。ギタリスト諸氏も「歌伴のお手本」としてぜひ耳を通して欲しい。 いや、やっぱりどうしても印象に残ってしまうのは彼女の声だけですが・・・。
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