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フレッチャー・ヘンダーソンを聴くということは、すなわち1930年代のアメリカにおいて最もきらびやかな音楽であったビッグ・バンド/スウィング・ジャズの最高峰の演奏を聴くということである。 高度なテクニックを有するスター・プレイヤー達を華麗に色付けする、洗練を極めたアレンジは、ジャズを一気に「アメリカで最先端の、イカす音楽」を経て「アメリカで一番ポピュラーな音楽」へと引っ張り上げたのだ。 あのデューク・エリントンもヘンダーソンのファンであり、アレンジを大いに参考にし、後に”スウィング王”として一世を風靡するベニー・グッドマンも、ヘンダーソンに自分の楽団のアレンジを頼み、ルイ・アームストロングが初めてニューヨークに出てきた時に雇ってくれたのもヘンダーソンであった。 個人的には「ブルースの女王」ベッシー・スミスのバック・バンドとして、繊細で落ち着いた雰囲気の演奏で華を添えていたヘンダーソン楽団の音楽性の高さに感動して、ファンになった覚えがある。 このアルバムに収録されているのは、ちょうど1930年頃に収録された、ヘンダーソン楽団の、最充実期の演奏を収めたアルバムだ。メンバーには当時のテナーの帝王、コールマン・ホーキンス(ts)、アルトではエリントン楽団のジョニー・ホッジスと並んで名手と讃えられていたベニー・カーター(as)などといったスター・プレイヤーを揃え、高い芸術性と、最高に品良くスウィングする演奏を聴かせてくれる。 この当時、彼らが演奏していたニューヨークの高級クラブは、裕福な白人聴衆向けのものであった。だからヘンダーソンにせよ、エリントンにせよ、「どうしたら白人の聴衆にウケるか」ということを考えて作曲し、演奏していた。ハイ・ソサエティの耳に適う、夢見心地な旋律。だけでなく、そこに彼らはジャズ本来の”クレイジーになれるノリ”をまぶすことを決して忘れずに、スウィング・ジャズという”クレイジーな音楽”を新たに生みだした。 とにかくヘンダーソン楽団の、水をも漏らさぬ完璧なアレンジである。まるでよく出来たデコレーションケーキの如く演奏全体は美しく整い、際立って見事なプレイを響かせるソロイスト達の個性が鮮やかに浮き出ている。特にこのバンドでは異質とも言えるかも知れないコールマン・ホーキンスのズ太いテナー・プレイが、演奏の雰囲気を壊すことなく、まろやかなコクを感じさせる見事なものに仕上がっている。これはもうヘンダーソンにしか出来ないアレンジの魔法と言っていいだろう。
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