|
|
1人がレコメンドしています |
自分もレコメンドを書く |
|
| Recommend!! | ||
|
「幻のシンガー」「悲運の女性シンガー」として語られることが裏付けるように、その生涯は謎に満ちており、リリースした僅かなアルバムも市場には大々的に出回ることはなく、彼女の存在同様「幻」として扱われ、いつしかジャズファンの間でも、その存在の神秘性が一人歩きして語られるようになった「伝説のシンガー」、ミリー・ヴァーノン。 近年、向田邦子が愛聴していたというエピソードも巷に広まり、ちょっとしたブームを巻き起こしていたが、彼女の沈み込むようなほの暗い表現は、ブームや風評とはまったく無縁の奥深さ、気高さすら感じさせる。 彼女のデビュー作である「イントロ・デューシング・ミリー・ヴァーノン」は、よく知られたスタンダード・ソングを採り上げた、ヴォーカリストのアルバムとしてはよくある作りのものではあるが、収録されている曲の歌詞は、どれも後ろ向き。儚い恋や思い通りにならない心、救いのない生活の苦悩なんかが、彼女のアンニュイで重く、気怠いヴォーカルで切々と歌われている。 正直彼女のヴォーカルは、決して華やかではないし、テクニックを駆使したものでもない。しかし、一定の、低く沈んだテンションで歌われる曲は、そのテンションの変化のなさによって逆に歌の微妙なニュアンスの違いを引き立てている。例えればビリー・ホリディのような、見事なストーリー表現の豊かさを彼女は持っているが、ビリーと比べても更に繊細で、放っておけばそのまま静かに消えてしまいそうな淡さと儚さ、そのたったひとつの特徴が、彼女の揺るぎない個性になっている。このあくまでうっすらとした味わいの底なしの深さと、じっとりした湿り気の奥に感じさせる、穏やかな狂気にも似た寂寥感が、何度も何度も、聴き手の感情の一番淋しい部分、切ない部分を緩やかに刺激して堪らない。 後で知ったことだが、このアルバムで採り上げた曲は、ヴァーノン自身が長年歌い続けてきた愛唱曲だそうだ。ジャズ・シンガーとして、26歳でデビューするまでに、実は5歳から歌手として活躍してきた彼女は、普通の子供には味わうことのない特別な悲哀でも味わってきたのか。とにかく人生そのものに疲れながらも、これまでに経験した様々な淋しさを歌にして昇華しているかのような、不思議な説得力がある。
|
|
|
|
|
|
|
|
(C)Copyright 2002. All rights reserved by RespectMusicJapan webmaster@recosell.com |