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日本の年末といえば "第九" である。今年は早々にこれを買って大晦日に備えてその前に軽く試聴しとこう、と思ってかけたのが運のつき、もう何度聴いたことやら。 これだけ有名な曲、名演と言われるものだけでも数多あるが、これにしたのはウィーン・フィルだしバーンスタインだし、でも一番は安い! が評価も悪くないようなので。(どうせ 1000円だし、あんまり酷ければ買い直せばいいし、それでまずは試し聴き…のつもりが) この CD の魅力は、つまるところ、べったべたのアメリカ人のレナード・バーンスタインと、欧州の名門ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との、融合にある。 まずわかりやすい。フルトヴェングラーは、確かに正統派で素晴らしいのかもしれないが、どこで盛り上がってどうなのか、小難しくてよくわからず、極端な話いつ始まっていつ終わったのか、どうもわからない、という遠い印象がある。少なくとも、これは良かった、と思った記憶がない。 カラヤンは、わかりやすいけどこれでもかー、と強調するところは(おそらく楽譜以上に)強調し抑えるところはものすごく抑えるそのわざとらしさがイヤ。 バーンスタインといえば、私にとってはウエスト・サイド・ストーリーで、あの突然踊り出す(ミュージカルはみんなそうだが)バカらしさとジェット団・シャーク団という二分立のアメリカ的わかりやすさ、楽しくも時に("Tonight" のように)美しい旋律もこなすバーンスタインの楽曲は、通奏低音としての社会の矛盾や不満を覆い隠してしまい単なるメロドラマ風に見せてしまうほど強い印象を与えたが、 この彼の第九、まずわかりやすい。ヴァー、ヴァー、ヴァー、と音を出すところはヴァー、ヴァー、ヴァー、と等分に等しい音量で何のひねりもなくそのままに出す、というわかりやすさはまさにウエスト・サイド・ストーリー的、時々笑ってしまうほどだ。 笑ってしまう第九、でいいのか? という議論もあろうが、いいのである。バーンスタインだから。何でも許せてしまう、あのおっさんの表情を見てると。 そして、そうでありながら大味にはならず随所で唸らせるうまさがあって、これはバーンスタインというよりウィーン・フィルハーモニーの持つ資質から来ているのであろう。 特に、第三楽章は、第九にこんな美しい旋律があったのか! と思わす素晴らしい繊細さを持っているが、これ、たぶん、バーンスタイン、何もしてない。100% あなたたちに任すよ、と言ってタクトを形だけ動かすふりをしてただけ、としか思えない素晴らしさである。こういうバーンとした男っぷりの良さも、バーンスタインならではである。(もちろんこの密約(?!)の存在は私の推測である) そして、歌い手たちの本気のうまさ、も見逃してはならない。ギネス・ジョーンズ(ソプラノ)、ハンナ・シュヴァルツ(アルト)、ルネ・コロ(テノール)、クルト・モル(バス)、そしてウィーン国立歌劇場合唱団(合唱指揮ノルベルト・バラチュ)、と書いていても誰なのかよく知らないが、やや細く聴こえる(あくまでも交響曲だから仕方ないが)ことを除いて技巧的にも情感としても最上に類するものと思う。 そしてエンディング。畳み掛けるようなノリノリリズムで一気にチャン・チャン・チャン・チャン大団円!! 素晴らしい。笑ってしまう素晴らしさ。 この感動は確かに、 (これは歓喜の歌、神の御魂に触れる喜びを敬虔にも表明する深さと発露が、それでいいのか?) という疑問、本来ベートーヴェンが苦悩のうちに辿り着いた歓喜とは、全く別種のものであるかもしれない。 しかしこの熱情、盛り上がりと喜びに顔のほころぶ姿、良いもの、快いものを聴かせてもらったー という満足感、わかりやすくも時おり垣間見せる熟達の技、に、 きっとベートーヴェンだって「コノヤロー!」と握りこぶしをつくりながらも笑って許してくれてる at 天国、に違いないのである。
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