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「フリー・ジャズとは何ぞや?」となると「えぇと、えぇと、コード進行とか、スケールとか、リズムとかの”約束事”を廃した、自由度の極めて高いジャズのことです。でも、でもぉ、彼らのやっていることは一見メチャクチャに見える訳なんですが、高度な知性と演奏技術によって・・・」と、どっちつかずのしどろもどろな説明を、ついついしてしまう訳だが、えぇい、もうまどろっこしい。 フリー・ジャズというのは、「過激でよぉ分からん音楽」です。 ハチャメチャな演奏から何を感じるかはアナタ次第。 「凄い!ヤバイ!オレの破壊衝動に火が点いたぜぇんぬっ!!」でも良いし 「こんなメチャクチャ、どこがいいのかしら」でも良い。 もちろん、上の2つの反応は両極端な事例であり、本当のところをぶっちゃけて言ってしまえば 「色んなアーティストがいて、それぞれ味わいが違います」 と、言える。言えるったら言える。 私のことを言えば、最初は「フリー・ジャズ」という何となくアブナそーな、イカガワシそーなジャンルの音楽に興味を持って、とりあえず「フリー・ジャズなら何でも」というテンションで聴いているうちに、アルバート・アイラーのサックスの、どうしようもなく溢れ出す郷愁みたいなものに涙して、後期コルトレーンの、メーターを振り切った激しさと緊張感がクセになり、アーチー・シェップの男気溢れる壊れっぷりに惚れ、そいでもって本日の主役、セシル・テイラーのミステリアスでサスペンスタッチの演奏の妖艶さにクラッときた。 それから後はなし崩しに、それぞれのアーティストの演奏に、勝手に「グッとくるポイント」を見付けて、「フリー・ジャズだからどう」ではなしに、ポイント別(?)に一区切り設けて好き勝手聴いている。 だから私の中では今「フリー・ジャズ」という明確な区分は存在しない。 それはそうと、テイラーである。 ジャズの世界でいち早くコードやスケールなどの常識を破壊にかかり、そのジャンパイ(麻雀の牌デス)をジャラジャラ掻き回すような奏法で賛否両論を巻き起こしたテイラーである。 実際はクラシックの理論も極め、マトモに弾かせれば全盛期のバド・パウエルにも負けず劣らずだったという、インテリで天才肌のピアニストであるが、テイラーのやんちゃぶりは、デビュー当初からかなり際立っていて、特に初期の演奏は、バックがまだ彼の言うところの”フリー”な流れに対応準備中のようなチグハグさがあって、純粋に「面白い」ものばかりなのだ。 「ピアノ+ヴィブラフォン+ベース+ドラムス」の編成で録音された、58年録音の本作も、面白いと言えばすこぶる付きで面白い。 バックはオーソドックスな4ビート。テイラー自身のプレイは、オーソドックスなバックだからこそ異彩を放っているテイラーのアナーキーなピアノが、存分に楽しめる。「ガコッ!」と、不意に繰り出される不協和音に、予測不可能なフレーズの”うねうね”な連なりを出しては引っ込め、出しては引っ込めしているテイラーのピアノからは、絶えずヒリヒリした緊張感とミステリアスな空気を生まれ、演奏全体に何とも言えない不穏の糸が、張り巡らされている。 そう、テイラーのデビュー当時から最近の作品まで一貫して変わらない魅力は、実は「ハチャメチャやってること」じゃなくて、ハチャメチャな演奏の中から飛び散ってくる知性とやるせなさ。胸がギュッと締め付けられるような狂おしい情感。テイラーのどのアルバムを聴いても「あぁイイなあ」と思える部分は決まってそれだ。 フリー云々はとりあえず置いといて、ひたすら「激しく切ない音楽」として、テイラーは聴くべし。
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