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「聴いてる時でないとレビューが書けない作品」というのがある。 私にとってはリー・コニッツの作品などはその最たるものだ。とにかく好きすぎるぐらい好きで、CDやレコードを可能な限り買い集め、時間があれば頻繁に耳を通しているものの、コニッツのスキのない構造美を持つ音世界、その中に縦横無尽に張り巡らされたアドリブの素晴らしさをレビューするには、こちらも音と向かい合い、音が鳴っている間の限られている時間に文章による即興を繰り広げて、書き挑むしかない。 只今必死で私が向き合っているのは、コニッツとストリングス・オーケストラとの共演を収録した「アン・イメージ」。 一曲目の「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」・・・ああいけない、演奏に耳を奪われているうちにどんどんトラックが過ぎて行く。即興で挑んだ勝負はあえなく完敗だ。 そもそもが「生涯インプロヴァイザー」として、パーカー、ドルフィーと比肩し得る即興演奏の求道者コニッツに、即興で対抗しようというのがそもそも間違いなのだ。 チンピラが挑みかかるにはあまりにも妖艶過ぎて崇高なこのアルバムは、コニッツのアルトに”弾き人知らず”のギターを中心としたバンド演奏と、管弦オーケストラの伴奏が複雑に絡み合い、と、ここまで書いているとよくある「ソロイストを引き立てるために、ムーディーなストリングスが添えられたウィズ・ストリングス・アルバム」のように思われるかも知れないが、ここでのコニッツのアルトは、単なるソロ楽器の職域を超えて、アルバム全体のメロディーの流れと、心地よい静謐な緊張感を全て把握してコントロールしている指揮者のようであり(アルトによるアドリブが、ケタ外れに冴えているにも関わらず、だ)、ストリングスもまた、単なる引き立て役に終わらず、コニッツの鋭いアドリブに、時に厳しく切り込んでくる。 更に触発されたコニッツのアドリブがまた、一見暖かで美しいメロディーを奏でても、その切れ味は凄まじく、美しい。美し過ぎて怖いぐらいだ。 コニッツもバンドもストリングスも、ジャズにおいて一番大切な”刺激”と”毒”の分量を寸分も手加減しない。どころかコニッツの持つ、クールなサウンドの裏側で光るキケンさが、ストリングスを加えることによってどういう訳か割り増しされている。 甘くやるせない”毒”のかたまりです。このアルバムは。
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