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グリニッチ・ヴィレッジのアルバート・アイラー / アルバート・アイラー
2003.11.21 UCCU-5193 ¥ 1,995 (税込) CD
フォー・ジョン・コルトレーン / チェンジ・ハズ・カム / トゥルース・イズ・マーチング・イン / アワ・プレイヤー 


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風邪を引いてたり、調子が悪い時は聴ける音楽も限られてくる。

とにかく熱がある時などは、布団に入って寝てるしかないが、ただ寝てると段々退屈になってくるので、大抵はイヤホン付けてCDを聴いているのだが、これも「何でも」という訳にはいかない。

特に普段「いいなあ」と思って聴いてるようなものや、「調子が悪いから穏やかなのにするか」と思って手を出すやつが逆に危ない。一見穏やかな音が、調子の悪い時に耳にうるさかったり重かったり感じてしまうことがあるからだ。

私の場合は普段好きで聴いているB級ハード・バップやピアノものがダメ。熱で感覚が麻痺してるのかそれとも逆にヘンな部分が研ぎ澄まされているのか、普段聴き流しているようなさり気ないフレーズまでが、どうにもヘヴィに思えてしまう。

気分を変えてロックやラテンを聴けば、音に活力がありすぎてダメ。ボサ・ノヴァはいいかと思えば、穏やかな演奏のウラにある情念の部分にばかり気が行っちゃってこれもダメ。クラシックなんて演奏者の気迫に圧倒されるばかりで早々に降参するのみであり、ブルースに至っては、そのまんまあの世に引きずり込まれてしまいそうな気がしてダメなのだ。

何が良かったかといえば、苦し紛れのヤケクソで聴いたアイラー。「え?アイラーってフリー・ジャズじゃない。キツいんじゃない?」と思うアナタは正解。しかし私にとって、熱にうなされて朦朧としている時のアイラーは実に優しく、心地よかった。

アイラーの演奏は、確かにフリーで、そこに和音やビートやスケールによってもたらされる秩序はない。あるのはただ、メロディーや発声がギリギリまで感情を高ぶらせた末に出てくる「叫び」と、まるで童謡や民謡のような、極めて素朴な「うた」のみ。「難しくて分かりづらい」と思われがちなフリー・ジャズだが、アイラーに限って言えばその音楽性は実に単純で分かり易い。頭をなるべく空にして聴いて、グッと来る部分に素直にグッとくれば良い。だからアイラーを聴くと気持ちが随分と楽になれる。

「グリニッジ・ヴィレッジのアルバート・アイラー」は、そんな私にとって恰好の常備薬のような1枚。我が家にたくさんあるアイラーのアルバムの中でも「フリーキーな部分」と、「グッとくるメロディー」のバランスがすこぶる良くて、しかもいい曲が多いときてるので、気分が「アイラーだな」となった時は頻繁に聴いている。

正直コレが風邪で弱っている時にたまらなくいいとは思わなかった。特に私が「アイラー”泣き節”の極み」と呼んでいる「チェンジ・ハズ・カム」。目一杯にヴィブラートを効かせたアイラーのテナーが、やるせなくも狂おしいメインテーマを奏で、実弟ドナルド・アイラーがそれを緩やかにバトンタッチ。そしてトドメとばかりにヴァイオリンがズバッと切り込んでくる。その間も黙々と壊れ続けているドラムが刻む不定形リズムが、真っ当に演奏されるよりも更に哀しく、美しい世界を、そこに出現させている。

アイラーの音楽は、一見グロテスクだ。しかし、旋律やリズムの約束事に縛られないアイラー達の演奏は、悲哀、歓喜、熱情といったピュアな感情のそのまんまの姿を聴く人に見せてくれる。

中原中也の「ホラホラ、これが僕の骨だ・・・」という詩が美しく力強いように、”剥き出しなるもの”しか持ち得ない強さや明るさを、アイラーの音楽も持っている。そして、その強さ、明るさは弱った体に自然と染みて効く。


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2008/2/19 高良俊礼
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ShinSeiDou @TOWER.JP

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