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60年代のアメリカに「フォーク・リヴァイバル」というブームがあった。 ここで言う「フォーク」というのは民謡のこと。つまりアメリカで白人黒人それぞれに伝わってきた古い歌を見直そうとう運動が、主に白人のインテリ学生の間で巻き起こり、新たなフォーク・アーティストが出てくる一方で、戦前に活躍していたものの、戦後は音楽稼業から足を洗って、ひっそりと生活していたブルースマンが、白人のリサーチャーによって次々と発見された。 再発見されたブルースマン達は、再びステージに立ったり、レコードをリリースするなどして、それまで黒人コミュニティの外にはほとんど出ることがなかったプリミティブな「ブルース」、または「ブルース以前の音楽」を、広く世に知らしめた。 彼らの音楽は、まだ見ぬ戦前のアメリカ南部の風景をセピア色に映し出し、聴く側の意識をブルースの旅に誘ってくれるから大好きだ。ラグタイムなどのダンス・ナンバーで、実際に聴衆が踊っていたであろう姿などを想像するだけでもうウットリしてしまう。 レイト・ビル・ウィリアムスのアルバム「ブルース・ラグ・アンド・バラッド」は、正にそんな「戦前南部の風景」を夢見させてくれる一枚だ。「ブルース」と、それ以前の音楽である「ラグ(パーティー・ソング)、バラッド(古謡)」を並べたタイトル、精悍な壮年ブルースマンの力強いイラストが大きく描かれたジャケットだけで思わず手が伸びるが、その昔LP時代の頃は「レイト・ビル・ウィリアムスという人よりも、このジャケットの方が有名」なんていう珍現象も起きていた。 それはそうと、1970年代になってようやく発見された老ブルースマン、録音当時何と70過ぎのレイトの歌とギターの達者さには舌を巻く。かつて盲目のラグタイム・ギターの名人中の名人と言われたブラインド・ブレイクの相方として活躍していただけに、その「1本なのに2本のギターが鳴っているように聞こえる」ラグのテクニックは素晴らしいし、リズムにもヨレがない。 カントリー風の軽快さに、思わずウキウキしてしまうバラッドや、洗練を感じさせるカラッとしたブルースの味わいも、まだ「ブルースが新しい音楽として演奏されていた」時代の名残りを感じさせてくれる。どの曲もギター1本での弾き語りだが、戦前に流行した、ありとあらゆるスタイルを極めたレイトの引き出しの多さゆえ、曲調には豊かなヴァリエーションがあって実に飽きさせてくれない。 しつこいようだが、こんな戦前ブルースのピュアな雰囲気を、クリアな音質でありのまま感じさせる音盤が、戦後も大分経った70年代の半ばにリリースされたということは、やっぱり素晴らしい。70年代のブラック・ミュージックといえばファンク全盛で、マイルス・デイヴィスを筆頭に、モダンから進化した、未来志向の電気化ジャズが話題をかっさらっていたことを考えると、何とも気が遠くなると同時に、アメリカン・ブラック・ミュージックの広さと深さ、その生命力の凄さに感動せざるを得ない。
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