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朱色のドギツイ背景から、勢い余ったゲンコツが飛び出しているこのジャケットのインパクトがまずもって強烈。これこそが「ブルースマン以外の何者でもない、ブルースの権化」ライトニン・ホプキンスを、ライトニン・ホプキンスたらしめる究極にアツい名盤”モージョ・ハンド”である。 今まで色んなブルースのアルバムを聴いてきたけど、どれも今ひとつピンとこなかった。と、お悩みの方、とりあえずコレを聴いてごらんなさい。コレ聴いてもピンとこなかったならば、ブルースなんていうヤクザな音楽なんぞ聴かずに、一生カタギとして平穏無事にお過ごしなさい。と、勢い余った発言のひとつでもしたくなってしまう。それぐらいのインパクトと、中身の充実度、そして名盤としての貫禄の全てを兼ね備えた作品なのだ。 もちろん、アルバム量がべらぼうに多く、そのいずれもが衝動の生々しさに裏付けられたクオリティの高さを有しているライトニンのこと。ある一枚をして、その魅力の全てを語り尽くせる訳ではもちろんないが、恐らく多くの人が「はじめて聴くライトニン」として出会うこのアルバムは、先に挙げたジャケ、中身、貫禄はもちろん、ビギナーの人にとっては、ライトニンの他のアルバムと皆さんを繋ぐ、最も重要なパーツとなるはずだ。 かく言う私自身もこのアルバムが、ライトニンとの衝撃の出会いとなった。時は1995年、あれは確か真夏だった。東京特有の”逃げ場のない暑さ”にウダりながら、逃げ込むように入ったCD屋、本作の輸入盤のジャケットと”対面”した時は「これがあの・・・」と、思わずツバを飲んだ。 本や雑誌で見る度に憧れた作品との出会いは、いつだってそんな感じだったが、本作のインパクトはCDでも十分過ぎるほど十分で、迷わず私は所持金を確認してレジへ持っていき、CD屋を出てから、歩いて数歩ぐらいの喫茶店に早速入り、アイスカフェオレをチビチビ飲みながらジャケットをずっと眺めていた。だから今でも本作を聴くと、東京のうだるような暑さとCD屋独特の匂いとアイスカフェオレの味がセットで脳裏に甦ってくる。 それはさておき肝心な中身だが、コレがジャケットに劣らず凄まじい。生ギターにピックアップを付けた、ライトニンお得意の「半分エレキ」を持って、ザリザリした質感の力強い音を、独特の”間”で容赦なく繰り出すギターの凄み、いつも以上の張りのある声の凄みが生み出す力強さに輪をかけて、ずっしりと重いエコーが効いた録音が、何とも不穏な緊張感をブレンドしてる。 ライトニン自身は至って自然。というよりも、小節感などまるで無視した、いつもの音の伸ばし方、フレーズの重ね方で重厚なリフと、文字通り稲妻のようなソロを炸裂させながら、時折「デヘヘ」と笑ってドス黒いヴォーカルで唸る。そんなライトニンを軽くサポートする程度で見事盛り立てているベースとドラムも偉い。そのお陰でラフなライトニンの魅力が「作品」としての完成度を強く印象付けるぐらいの完成度でもって迫ってくる。 ライトニンのアルバムの中でも「作品」としての屈指の完成度を誇る「モージョ・ハンド」。「どれか一枚」なんてとても選べるもんじゃないが、やっぱりコレがないと始まらない。で、コレを聴いてまた別のアルバムを聴くと、そのアルバムの良さも染みてくる。やっぱりライトニンのアルバム群の中でも最重要、と、色んなアルバムを聴いてまた思うのだ。
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