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2005年12月08日

岡本おさみ アコースティックパーティー with 吉川忠英

 「俺節」という漫画を知っているだろうか。その中にとある三流作詞家が登場する。もともとはフォークの出身で、昔は素晴らしい詞をものにしたこともあったのだが、現在はB級アイドル向けの作詞でお茶を濁している。彼は自分の弱さを隠すため、常に斜に構えて世の中を見ている。それは世渡りがヘタで、高い理想とプライドを持った男ならではのつっぱり方なのだが、そんな彼の不器用なロマンティストぶりが、僕にはどうしてもこの人の作品に重なってしまう。

 僕のように拓郎に間に合わなかった世代にとっては、SIONの歌で初めて触れた人が多いんじゃないだろうか。"OKAMOTO"とクレジットされたその名前から放たれていたのは、ロマンというには情けない負け犬の嘆きや、そんな負け犬たちを世の中の底辺から見守る温かい視線(それは決して甘やかすということではない)といった、あまりにも優しい言葉の数々だった。そんな言葉たちとともにメジャーシーンに踏み出したSIONが、"OKAMOTO"と同じような優しさをたたえた泉谷しげるに接近していったのは当然のことだったろう。

 このCDは"OKAMOTO"こと岡本おさみが作詞した歌をアコースティックギターの名手吉川忠英のバッキングに乗せて13名のシンガー(岡本と吉川も含む)がカヴァーしたアルバムだ。ほとんどの曲はシンプルなアコースティックギターのみをバックに歌われる。余計な装飾を排した、まったくギミックのないシンプル極まりない演奏。ミュージシャンたちにとってはまる裸にされたも同然の勇気のいる決断だ。当然、演奏には力が入る。しかし、どうだろう。聴いてみると、そこに流れている空気はとてもリラックスしている。いや、リラックスというより安心しているのだ。リキんで歌っても意味がない。そのままぶつかっていけばいい。岡本の書く詞にはがむしゃらな若さも、年をとっても一向に消えようがない不安も、すべてを真正面から受けとめてくれる力強さがある。自分で歌ってみれば分かるはずだ。岡本の詞は"その気にさせる"のだ。周りさえ見えない。だからこそプロのシンガーたちも岡本の詞に身をまかせている。彼らは小さな子供が些細なことで泣くように、さも当たり前のように自然に歌う。いつもは繊細な音色が持ち味の吉川のギターでさえ荒々しく響く。だからこのアルバムはノイジーだ。どんなに音数が少なくても騒がしく耳の中で鳴り続ける。でもそれは決して煩わしいものじゃない。ザラザラした手触りの歌は、いつまでも心のひだにひっかかったままだ。小さな子供が転んで泣いている時、迷子になって泣いている時、心優しい人なら立ち止まって声をかけてあげるだろう。ここにある歌の数々はそんな大切なことを思い出させてくれるはずだ。


いけたな
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投稿者 recosell : 2005年12月08日 01:21

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